教会も調査対象に 自衛隊内部文書で発覚 実名出た教会の牧師が不快感〝氷山の一角〟 2007年6月23日

 陸上自衛隊の情報保全隊が自衛隊の活動に批判的な全国の市民団体などの動向を調査し「内部文書」を作成していたことが、6月6日、志位和夫氏(共産党委員長)の記者会見で明らかになった。公表された文書は、情報保全隊が作成した「イラク派遣に対する国内勢力の反対動向」と、東北方面情報保全隊が収集した情報を週ごとにまとめ分析を加えた「情報資料について(通知)」の2種類。A4判で166ページに上る。

 記載されているのは、自衛隊のイラク派兵をめぐって03年11月から04年2月までに行われた集会やデモ、ビラ配りなどの活動に関する情報で、名称(主催団体)や行動の形態、日時、場所、動員数をはじめ、デモの道順、発言内容、プラカードの文言にまで及ぶ。

 調査の対象となっているのは、全国41都道府県、289団体・個人。中には、懇親会で質問した記者の実名と質問の概要、市町村議会で採択された「イラク派兵反対決議」の経緯、騒音に抗議する苦情電話をかけた一般人の実名や住所まで含まれている。また、自衛隊の動きに限らず、医療費負担増、年金改悪、消費税増税に反対する活動なども記録している。

 志位氏は、「憲法を蹂躙した違憲の活動であるとともに、自衛隊法にも根拠をもたない違法な活動」と述べ、政府に対し、情報保全隊の活動の全容を明らかにし、「監視」活動をただちに中止するよう求めた。

 防衛省の折木良一陸上幕僚長は翌7日の記者会見で、「防衛省の設置法、訓令で必要な情報収集をし、整理をする任務が定められており、その範囲内」と正当性を強調。久間章生防衛相は同日の参院外交防衛委員会で、「写真撮影は違法」との指摘に対し、「マスコミも写真は撮る。取材が良くて自衛隊が駄目だという法的根拠はない」と答弁した。

 キリスト者による活動も調査の対象となっている。日本基督教団北海教区道北クリスチャンセンター(名寄市東六条)=通称・道北センター「森の家」=は、04年2月15日、「『イラクレポート』と題する講演会」の主催団体として記載されていた。館長のロバート・ウィットマー氏(カナダ合同教会派遣宣教師)は、「どういう目的で情報を収集しているのか不明だが、気持ちのいいものではない。そもそも憲法上、自衛隊は戦場に行ってはいけない。たとえどんなことがあっても、日本や世界の平和のため、何より自衛隊員のためにも、可能なかぎり活動を続けていきたい」と決意を新たにした。同センターは、平和を求める集会や祈祷会、子どものための人形劇などを行っており、他教派の教会からも多くの信徒が参加するという。

 名寄市に住む自衛隊員は約1600人。家族や関係者は6千人を超えるため、経済的に依拠している部分も大きい。「自衛隊の中には尊敬する友人もいる。ただ、自衛隊には肯定的でも国家主義的傾向に不安を感じている人は多い」と同氏。「隊員の家族は皆、平和を願っている」と述べ、「(監視は)隊員や家族の心配に応えるため」とする防衛省側の見解に異議を唱えた。

 日本バプテスト京都教会(京都市上京区)は、04年2月に「意見広告を掲載した」と記載されている。同教会は、「イラク派遣に反対する意見広告の会」の連絡先として新聞に掲載された。今回の文書は「氷山の一角に過ぎない」と指摘する同教会牧師の大谷心基氏は、自身のブログで「イラクで殺された人たち、イラクの最前線に行くしかなかった中で殺された貧しき兵士たち。彼らの命が受けた悲惨さに比べてわたしが、教会が受けた悲惨さなんていかほどか」と記す。むしろ、教会と国家のあり方について再度検証していく良い機会だという。「今回の件で、こちら側は何も変わる必要はない。変わるべきは自衛隊。信仰に堅く立って歩むことを教会員と確認し合いたい」と述べ、「依り頼むべきは自衛隊や国家の力ではない」と強調した。

 今年1月、防衛庁が「省」に昇格して以来、内部情報の流出、現役女性自衛官による告訴、辺野古への自衛艦派遣など、多くの難題を抱える自衛隊。「市民団体の監視に時間とエネルギーを使っていたから、隊内の機密漏洩にも気づかなかったと言われても仕方ない」と指摘する声もあり、今後さらに大きな波紋を広げそうだ。

【キーワード】
 情報保全隊=2003年3月に、それまでの「調査隊」を再編・強化し、陸海空の三自衛隊に設置された防衛大臣直轄の情報部隊。隊員数は約900人とされている。表向き「機密情報の保護と漏洩防止」が主な任務とされてきたが、詳細については開示されていない。

 今回の文書公表を受けキリスト者政治連盟(大島孝一委員長)は6月8日、抗議の声明を発表。声明では、「まさに軍隊が国民を『監視する』のみならず『敵視する』という民主主義にあるまじき行為に、心より憤りを覚え、徹底抗議する」とした上で、「イラク派遣を批判する人々を頭から危険な存在とみなし、その行動を『反自衛隊活動』とその文書に記載した事実は、所詮軍隊が国民を護ることなどあり得ないことを明確に示す」と指摘。「事態の全容と責任の所在を明らかにすること」「同様な事態がその内部文書作成以降に行なわれていないかを明らかにすること」「国家による国民監視活動を一切しないこと」「軍隊で国民を護ることはできないことを確認し、憲法9条に基づき直ちに自衛隊及び防衛省を廃止すること」の4点を要求している。

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