「自死遺族支えよう」 未遂者・家族への理解も 東京 2010年1月23日

 自殺者が毎年3万人を超えている。その遺族に対する偏見が今も強い中で、自殺未遂者とその家族を理解し、自死遺族を支えようと、シンポジウム「自殺予防と自死遺族支援の現状と課題」が09年12月11日に東京福音会センター(東京都中央区)で開催された。国立精神神経センター・自殺予防総合対策センターと聖学院大学大学院・総合研究所の主催によるもので、自死遺族を含む80人が出席した。
 まず課題に対する現状報告として竹島正氏(国立精神神経センター精神保健研究所精神保健計画部長・自殺予防総合対策センター長)が講演を行った。同氏は日本の死因順位の7位である「自殺」を、自殺という共通の結果を引き起こす「社会病」として捉えることを提案した。また、若年層の自殺死亡率が徐々に高くなっていることを示し、現在の日本の自殺対策は中高年男性の経済モデルの自殺対策であり、若年層には当てはまらないと指摘。性別・年齢により自殺にはさまざまな要因があり、その危険因子に対して自殺予防の介入ポイントを模索することが必要と述べた。またメディアについて、社会の脆弱な人たちに配慮し、自殺の場所や方法についての詳細な報道は避けるよう提言した。
 続けて土肥隆一氏(民主党衆議院議員)が講演。牧師として自死者の葬儀を行った体験を通して、葬儀後の遺族に対するアフターケアなど、宗教者の役割の重要性について指摘した。また、2006年に成立した「自殺対策基本法」について、自殺未遂者や自死遺族の雇用の問題、不動産の賃貸・売買の問題など、課題が分散化されており、ほとんど対策ができていないと指摘。「政治が何かできるとすれば、結局は制度的な対策に過ぎない。啓蒙、啓発に過ぎない。それ以外に政治はなかなか先に進めない」と述べた上で、むしろNPO・NGOなどの民間の働きを国や行政が支援する制度が必要だと主張した。
 さらに三輪久美子氏(洗足学園短期大学講師)、岡島妙英氏(精神保健福祉士・僧侶)、斎藤幸光氏(司法書士・行政書士)による指定討論が行われた。
 最後に平山正実氏(聖学院大学大学院教授・総合研究所カウンセリングセンター長)が発言し、「自殺者及び自殺未遂者並びにかれらの親族の二次被害保護法」(仮称)の成立を目指して賛同を呼びかけた。
 平山氏は、自殺未遂者及びその家族並びに自殺者の遺族等の名誉と生活が、「自殺対策基本法」第7条に明記されているように「果たして守られているだろうか。そこに問題意識を感じた」と述べ、第9条に基づく二次被害保護に関する法案成立を目指すべきだと主張した。

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