砂川政教分離訴訟 市有地に神社は「違憲」 2010年1月30日

“闘いはこれから 希望ある”
「空知太」は差し戻し、「富平」は敗訴
 「最高裁は憲法を守った」――谷内栄さん(日本キリスト教会滝川教会員=79)ら住民2人が起こした砂川政教分離訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は1月20日、「市が特定の宗教に特別の便益を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない」として、違憲との判断を示した。 裁判で争われたのは、2004年3月に提訴した空知太神社と05年6月に提訴した富平神社の2件。
 市の補助を受けて町内会が建設した空知太神社は、町内会館と一体化した構造で、市は市有地化された敷地の無償使用を認めてきた。
 大法廷は札幌高裁の違憲判決を支持し、「建物は神道の神社の施設にあたり、行われている祭事なども宗教的な行事」と指摘。その上で、違憲状態を解消する方法について「神社施設の撤去以外に現実的な手法があり得る」とし、さらに審理を尽くすよう高裁に差し戻した。
 一方、市が富平神社の建つ市有地を町内会に無償譲渡したことの違憲性をめぐる件では、「無償譲渡は違法状態の解消が目的であり、手段も相当」として、合憲とする判決を下した。
 最高裁が政教分離をめぐって憲法判断を示した判例は、津地鎮祭訴訟(1977年)、自衛官合資訴訟(88年)などを含め11件あるが、違憲との判断は97年の愛媛玉ぐし料訴訟以来、2件目。
 これまでの裁判では、国家と宗教の関係について「行為の目的や効果が、わが国の社会的・文化的諸条件に照らし、相当とされる限度を超える場合には許されない」とする「目的効果基準」が踏襲されてきたが、今回の判決は新たに、「宗教施設の性格や無償提供の経緯、一般人の認識などの諸般の事情を考慮し、総合的に判断すべき」との基準を示した。
 砂川市の上告理由書によると、公有地上に宗教施設がある事例は「全国的に数千件にとどまらない」とされており、国や自治体は何らかの対応を迫られることになりそうだ。
     
 弁護団は「全国の公有地に建つ神社の違憲性を解消すべきとした点に歴史的意味がある。国家と宗教が分離するという理想の形に一歩近づいたのではないか」と評価する一方、「このような結果は誰も予想しなかった。違憲としながら差し戻すなど、まるで政治家のような中途半端な判断で、法律家の出す判決ではない」と断じた。
 この問題に携わってきた18年の間、憲法の条文を肌身離さず持ち歩いてきたという原告の谷内さんは、「最高裁は憲法の精神を守った。この判決を土台に、ある程度道が開けてくるのではないか。闘いはこれから」と、さらに続く裁判への意欲をみなぎらせた。
 また、「一人のキリスト者として神社神道の信仰も尊重するが、『参拝は当然』という戦時中のような意識は改めてほしい。互いの立場を明確にしながら、ともに尊重し合える宗教でありたい」と訴えた。「天皇のために生きるのが本望とだまされてきた人生を取り戻したい」と提訴に加わった原告の高橋政義さん(87)は、体調不良のため、この日の判決に立ち会うことができなかった。
 判決への満足度を問われ「65点」と答えた谷内さんだが、「まだ捨てたもんじゃない。希望はある」と話すその表情は、心なしか晴れ晴れとしていた。
(本紙・松谷信司)

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