準強姦容疑 “まだ苦しむ人がいる” 卞氏逮捕で新たな局面 2010年2月13日

 「まだまだ苦しんでいる人がおり、支援を続けていきたい」――国際福音キリスト教会の牧師、卞在昌容疑者(61)が1月28日、準強姦容疑で逮捕されたことを受け、「モルデカイの会」代表の加藤光一氏は同日、つくば市内で開いた記者会見で、そう決意を語った。これまで、「小牧者訓練会」が主催するコンベンションなどを通じ同容疑者と親交のあった牧師が超教派で声明を出したほか、「セクハラ」「パワハラ」を訴えた民事訴訟が起こされるなど、加害の実態を追及する動きが広がってきたが、今回の逮捕を受け、新たな局面を迎えることになりそうだ。

「モルデカイの会」が会見

 「モルデカイの会」は、かつて国際福音キリスト教会に所属していた信徒らを中心に、セクハラ被害を受けた女性たちの裁判を支援するため設立されたもので、2009年7 月29日に提訴された「セクハラ民事裁判」、同年12月15 日に提訴された「パワハラ民事裁判」(いずれも東京地裁民事部)の原告を支援してきた。
 この日の会見で発表した声明によると、これらの事件に共通する問題は、「主任牧師である卞在昌宣教師が、自らを霊的指導者であるとしてその絶対的権威を説く権威主義的な教会政治にあり、このことによって、被害者らが主任牧師や上位教職者には絶対に服従しなければならない、その失敗も絶対に責めてはならないと信じ込まされたこと」「その絶対的権威を利用して主任牧師や上位教職者が不法行為を行ったこと」「主任牧師や上位教職者を責めること自体が罪であると被害者に信じ込ませ、逆に、教会内部において訴えるものを非難する風土を醸成し、これらの被害事実を隠蔽してきたこと」の3点。
 今回の逮捕を機に、「司直の手を通してこれらの事件の真相とともに、事件を起こした宗教法人小牧者訓練会・国際福音キリスト教会自身の内包する問題点もまた明らかにされることを望んでおります」としている。
 また、卞容疑者の罪が明らかにされた際には、「心底からの謝罪と、日本の法律に従った償いを求める」とし、そのことこそが長い間苦しんで来た被害者や家族の癒しと権利の回復につながるとの見解を示した。
 同会によると、今回立件された事件以外にも性的被害を受けたと訴える元信者が相次いでおり、今も精神的呪縛から被害を訴えられない信徒が教団内に残っている可能性もあるという。さらに、国内の他の教会にも同種の問題が内在していると指摘。この事件の解明がそれらの教会への警鐘として、被害者の救出に役立てれば、と期待を寄せた。
 湊信明弁護士は会見で、卞容疑者が共同生活していた神学生らに対し、セクハラ行為をエスカレートさせていった過程を説明し、「信仰心に付け入った犯行で、被害者数を特定するのは難しい」と指摘した。卞容疑者は不法行為を否認しており、原告の女性がつくば中央署に刑事告訴したことが、この日の逮捕につながった。
 卞容疑者は大韓イエス教長老会高神派出身の韓国人宣教師。1981年に来日後、国際福音キリスト教会を設立。「ディボーション」や「弟子訓練」などを中心に活動する「小牧者訓練会」を立ち上げ、代表も務めた。

FOEも声明
裁判以外の面で支援

 宗教法人「小牧者訓練会」による被害を受けた女性たちの救出と癒しを目的とする会(毛利陽子代表)=FOE(Faith Of Esther)は、卞氏の逮捕を受けて緊急声明を発表した。
 同会は「卞氏の不当行為と被害の真実を明らかにし、神の義を共に見る」「同様の被害にあっている人々を一刻も早く救出し、回復できるようにサポートする」の二つを目的に、08年12月に設立された。
 声明で同会は、「今回の逮捕、取り調べにより真実が明らかになることを心から願うとともに、今も被害に遭っているであろう人々が1日も早く自分の置かれている状況や立場を理解し、牧師の言うがままではなく自分で考え、自分で感じることの大切さを取り戻して欲しいと願っています」とし、今後も「訴えることはしないで回復の道を歩む人の友人となり、民事裁判原告となっている姉妹たちの精神的支えとなり、これから出てくる人たちの心身両面のサポートを行っていきたい」と、裁判以外の面で被害者支援を続ける姿勢を明らかにした。
 また、卞氏による被害は性的な被害にとどまらず、精神的苦痛、人間不信、思考の混乱、人間関係の破壊と、「大きな痛手を多くの人が受けて」おり、それが家族にまで苦しみが広がっていると指摘し、「回復のため、日本の多くのキリスト教会や牧師先生、皆さんのお祈りとご支援を必要としています。どうぞ、今後とも私たちの活動にご理解いただき、ご支援賜りますようお願い申し上げます」と呼びかけている。

教会側は全面対決の姿勢崩さず

 一方、国際福音キリスト教会は河野健氏の名前で同日、声明を発表。今回の逮捕について、「警察が被害者と称する者の虚偽の申述に基づき、ビュン牧師並びに同牧師を知る身近な関係者から一切の事情聴取もせずに、一方的に行ったもので、まったく公正を欠いたもの」と抗議。
 これまでは、ただ事実がない旨を述べ、「『あなたの敵を愛せよ』というイエス・キリストの教えに基づき、これらの人達を非難するような言動を控えてき」たが、今後は「刑事手続及び民事裁判の場で、ビュン牧師が無実であり、何が真実であるかを積極的に明らかにし、さらに虚偽の申述をしている人達並びにその背後にいる人達の責任を厳しく追及していく所存です」と表明している。
 同教会はこれまでも卞氏の無実を訴え、事実無根の罪を着せられ名誉を傷つけられたとして、超教派の牧師や信徒有志、被害を訴えた女性らに対し、法的措置を取ることを示唆する内容証明通知を送付していた。また、自発的に教会を離れた教職者や信徒にも戒規除名処分通知を送付するなど、全面的に争う構えを示している。

 

卞氏逮捕までの経緯

1990年代~ 卞氏による性的被害が拡大。
2008年5月 牧師、信徒リーダー、伝道師の辞職が相次ぐ。
   8月 信徒リーダー2人が卞氏に被害者の訴えを伝える。
   11月 信徒が個人的に卞市や側近教職者に和解を求める。
   12月 「FOE」発足。複数の牧師が被害者から証言を聞く。
      教職者による会合で卞氏が辞任を表明。
      卞氏の呼びかけで「謝罪会」を開催。卞氏は沈黙。
 09年1月 要請に対し、卞氏と教職者から期待する回答得られず。
      牧師有志と被害者らが、卞氏と側近の教職者5人と対話。
      卞氏以外は被害の事実を認める。
   2月 「望みは絶たれた」と判断した牧師らが声明を発表。
      卞氏代理人より、名誉毀損を訴える「通知書」届く。
   3月 小牧者訓練会の代理人から「通知書」届く。
   4月 声明を発表した信徒有志に「除名通知書」届く。
      複数の被害者に発言の撤回を求める「通知書」届く。
   5月 元教職者に「戒規通知書」届く。
   7月 卞氏、講壇に復帰。記念礼拝でメッセージ。
      4人の女性がセクハラで提訴。
   12月 1人の男性がパワハラで提訴。
      つくば中央署が刑事告訴状を受理。
 10年1月 準強姦容疑で卞氏を逮捕。

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