ラインホールド・ニーバー “「世界史の神学」目指す” 2010年2月13日

 聖学院大学総合研究所(大木英夫所長)は、3回目となるラインホールド・ニーバー研究会を1月30日、同大学本部(東京都北区)で開催した。同大学大学院教授でラインホールド・ニーバー研究センター長を務める大木英夫氏が「ラインホールド・ニーバー『アメリカ史のアイロニー』」と題して講演、研究者など約50人が出席した。

 『アメリカ史のアイロニー』(大木英夫・深井智朗訳、聖学院大学出版会、2008年)を今回の講演で取り上げた理由について大木氏は、同書がニーバーの典型的な書物であり、ニーバーの思想の化身のようなものであると説明。この書で問われている「アメリカ史」は歴史研究ではなく、神学的考察の対象であり、その場合の「アメリカ」とは地理ではなく歴史であり、その歴史の認識は人間の在り方と結び合っていると解説した。
 また、同書に「世界史」という言葉が繰り返し登場することに触れ、「同書は『世界史の神学』を目指しているのではないか」「ニーバーは『世界共同体』の形成という新しい課題と取り組んだ最初の神学者と言える」と述べた。さらに「最強の国家あるいは諸国家の同盟さえも、それ自体歴史のドラマを構成する多くの力の単なる一つにすぎない」という言葉を同書から引用し、バルトやティリッヒにはない視野だと指摘した。
 最後に、ニーバーが同書でセルバンテスの『ドン・キホーテ』に言及していることを大木氏は、「ニーバーは『ドン・キホーテ』の中で、歴史的ずれという人間理性の問題を見た。また、歴史の理解における錯誤の可能性を見た」「ニーバーは、新しい時代に新しい人間理解が必要であり、それに基づく新しい政治、そして新しい世界の形成が必要と考えた。それは聖書的人間論の現代的妥当性を立証するものとなった」と結論付けた。
 同研究所は昨年10月に「ラインホールド・ニーバー研究センター」を設置。これまで高橋義文氏(同大学大学院教授)、武田清子氏(国際基督教大学名誉教授)が講師を務めた。次回は5月15日、安酸敏眞氏(北海学園大学大学院教授)の講演を予定している。

日本の思想的伝統とキリスト教
黒住眞氏講演

聖学院大学総合研究所は1月26日、東京都北区の同大学本部で、「グローバリゼーションの文脈における総合的日本研究会」を開催した。黒住眞氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)が「日本の思想的伝統とキリスト教」と題して講演を行い、関係者など約30人が出席した。
 黒住氏は、人類における思想宗教の発生史と近世以前の日本における思想宗教に言及した上で、近世以後の日本におけるキリスト教と諸宗教との関係を解説した。
 戦前・戦時中の動きとして、西田幾多郎、鈴木大拙に加え、同志社大学教授の魚木忠一に着目。その著書『日本基督教の精神的伝統』の中で、仏教は教理、儒教は礼教、キリスト教は触発であると言われており、触発とは救済であり、キリスト教の救済とは求贖を意味し、それがキリシタンや平田篤胤などにも見出せると指摘した魚木の視点を紹介した。
 黒住氏は「キリスト教と日本文化とのよい意味での融合があったほうがいい」と結んだ。

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