〝教会は癒しや慰め与えているか〟 キリスト教カウンセリングセンターで窪寺氏講演 2010年2月20日

「スピリチュアリティ」の本質は……
 「スピリチュアリティとカウンセリング」をテーマにキリスト教カウンセリングセンター(今橋朗理事長)は2月6日、幼きイエスの会修道院(東京都千代田区)で講演会を開催した。聖学院大学大学院教授の窪寺俊之氏が講演し、約160人が参加した。同氏は、現代人が傷ついた心を「スピリチュアルなもの」に求めていることに言及し、「スピリチュアリティ」の本質を明らかにすることを講演の目的とした。

本当の福音提供に戸惑いも
 同氏はまず、終末期のがん患者に対するホスピスのケアに、肉体的・精神的・社会的・霊的の四つのケアがあることを示した。その上で、「人間は誰でも自分のいのちが死後どこに行くのかという問題を抱える」のであり、肉体的な苦痛とは別に霊的な痛みの緩和が必要になると語った。またスピリチュアリティの問題がヒューマンサービスの領域で関心が持たれていることについて、「いのちの意味」「存在の意味」が問われている状況にあると説明。
 「『スピリチュアルな』という言葉は本来宗教的な用語として用いられてきた」が、今日問題とされるのは、「人間のスピリチュアルな側面に働きかけて、人間の本質を回復・活性化する機能としてのスピリチュアリティ」であると語った窪寺氏。ケアの一つとしてスピリチュアリティが持つ「癒し」の機能、「人間の本質の回復」の機能に注目した。
 また、「心理的ケア」「宗教的ケア」「スピリチュアルケア」の違いを解説。「心理的ケア」は人間関係の問題を中心に扱い、「宗教的ケア」は「死後のいのち」や「赦し」などの問題を扱うが、「宗教が扱っている問題に悩んだ時、牧師や神父に尋ねれば答えは出てくるが、その答えが自分に合わないことがある。その人はたぶん教会からも去っていくと思う。その人たちに手を出さないでいいかというと、そうではない」と述べ、スピリチュアルケアの必要性を指摘した。
 自分のいのちの意味を知りたいと思う日本人は多いが、9・11やオウム真理教を契機に宗教に警戒心を持っているため、その答えをスピリチュアルケアに見出そうとすると述べ、「既成の教会は現代人が求めているような形で癒しや慰め、励ましを与えていないのかもしれない」「スピリチュアリティへの関心が広がったことは、わたしたち宗教の世界にいる者に、ある意味での反省を促していると思う」と窪寺氏は指摘。「わたしたちが持っている本当の福音をどうやって社会に提供するかということに、わたしたちは戸惑っているのではないか」と語った。

「援助者には完成と能力が必要」
 さらに、スピリチュアリティは人間存在の神秘性、全体性を問題にする考え方であり、証明可能ではないが、生きる力や忍耐力を生み出す働きを持つと語り、「(我と神の)垂直的関係が自分の癒しになり、『自分らしさ』を回復することになる。そこでは自己を肯定したり受容したり、愛することができるように変えられる」とスピリチュアリティの特徴を述べた。
 スピリチュアリティの世界は宗教だけでなく、自然や民族的なもの、文化や人間関係の中にもあると述べた同氏。スピリチュアルケアは、存在の「全体性」「神秘性」「関係性」を回復する働きであり、そこから自己回復、生きる意味の発見、人間としての生の回復が得られると解説した。また、援助者に求められるものは、スピリチュアルな問題を感じ取る感性と、それを解釈する能力であると述べた。
 同センターは「キリスト教カウンセリング講座」の2010年度受講生を募集している。募集は午前クラス(前10時半~後12時30分)で定員40人。4月7日開講、毎週水曜日。場所は日本聖書神学校(東京都新宿区)。1年3期(各期10回)で3年間の学び。各期3万1500円、および資料代1500円(1年分)。問合せは同センター(℡03・3971・4865)まで。

カリキュラム
▽1年度の学び やさしいカウンセリング入門/人間関係/カウンセリングの諸問題 ▽2年度の学び カウンセリングの理論と実際Ⅰ/カウンセリングの理論と実際Ⅱ/グループ体験学習 ▽3年度の学び パーソナリティと精神保健/スキルトレーニング/ケースの扱い

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