研究者ら「宗教文化士」制度運営へ 宗教文化教育推進センター設立 2011年1月29日

 今年から認定試験が始まる「宗教文化士」制度。同制度を運営する宗教文化教育推進センター(CERC・略称サーク)の設立記念式と成果発表会が1月9日、事務局が置かれる国学院大学(東京都渋谷区)で開催された。

 センター長の土屋博氏(北海道大学名誉教授=写真右)と事務局長の井上順孝氏(国学院大学教授=写真左)が成果発表を行い、星野英紀(大正大学教授)、島薗進(日本宗教学会会長、東京大学教授)、櫻井義秀(「宗教と社会」学会会長、北海道大学教授)の3氏が今後の課題を語った。

「宗教教育」を考える手がかりに

 土屋氏は「大学における宗教文化教育の実質化を図るシステム構築」と題する配布資料の中で、「宗教文化士」資格認定制度の目指すところとして、「現代の人間社会の生きた宗教的現実を従来の宗教論につなげて、そこから宗教教育をめぐる議論の行き詰まりを打開するために、一つの具体的なくさびを打ち込むこと」を挙げ、その際社会的に共有されるべき基礎的な宗教知識は「現代に生きる人間にとって不可欠の認識対象であることを知りうるようなものでなければならない」としている。

 また、CERCの規定の「宗教文化士の倫理」という項目で、「宗教文化士」の資格を特定の宗教を批判する手段として用いたり、布教や教化の手段として用いることを禁じていることに触れ、「これは、各々の教団の活動に何らかの価値判断をあてはめようとするものではない」「大切なことは、宗教的営みの当事者となった人間が、自らの状況の中で主体的に的確な判断を下しうることであり、それこそが、宗教文化教育の最終的目標となる。その判断は、当然公共の場で適用するものでなければならない」と述べている。

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 同氏は本紙の取材に対し、公教育における宗教教育の可能性を課題として挙げ、日本での議論が行き詰まっていることを指摘し、「そこを突破しようというのが今回の企画のねらい」とコメント。「キリスト教主義学校教育も一緒になって考えていただきたい問題」だとしつつも、「それについての通路が必ずしも明確になっていない」と述べ、「宗派教育・教派教育としてのキリスト教教育が成功しているとは言えない。仏教でも同じ状況」と指摘。広く考えなければならない問題だとしている。

 現在キリスト教主義大学では、関西学院大学がパイロット校として参加しているが、「宗教文化士」資格認定試験は個人でも参加できる。「自分の将来を切り開くための手立てとしてもらえれば非常にありがたい。そのことが日本における宗教教育の問題を考えていく具体的な手がかりになっていくのではないかと考えている」と期待を込める。

16単位以上の科目履修で受験可

 CERCは、日本宗教学会と「宗教と社会」学会のメンバーによって行われた研究の成果として設立され、研究グループの中から運営委員15人が選出されている。CERCによると、「宗教文化士」は、「日本や世界の宗教の歴史と現状について、専門の教員から学んで視野を広げ、宗教への理解を深めた人に対して与えられる資格」であり、「主な宗教の歴史的展開や教え・実践法の特徴、文化と宗教の関わり、現代社会における宗教の役割や機能といったことについて、社会の中で活かせる知識を養っていること」が求められる。

 大学において三つの到達目標に対応した科目を履修し、合計16単位以上を取得した後、認定試験に合格することが必要となる。認定試験は年度ごとに2回行われ、1回目は6月26日、東京その他の複数会場で実施予定。問合せは、CERC(℡・FAX03・5466・6692、Eメールinfo@cerc.jp)まで。

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