〝世界に広げる責務〟「宗教者九条の和」で井田洋子氏が講演 2011年3月5日

「人権侵害見過ごすな」――鈴木怜子氏が応答

 平和を希求する宗教者が宗派・教派を越えて集う「宗教者九条の和」(事務局・日本山妙法寺内)は2月19日、東京・港区の梅窓院・祖師堂で講演会を開催した。憲法学者の井田洋子氏(長崎大学教授、「長崎県九条の会」事務局)が「人類の祈り 日本国憲法第九条――今宗教者に問われていること」と題して講演。約150人が参加した。

 井田氏は近代以降の憲法が担ってきた役割とその変遷について解説した上で、現憲法の最大の特徴として「象徴天皇制」と「絶対平和主義」を挙げ、「世界的にも遜色のない普遍性を持つ日本国憲法だが、その制定過程をどう見るかで評価が二分している」と指摘。

 敗戦直後の日本には、「天皇制の廃止と軍部の縮小が必要」と考えていた国際世論、天皇制の護持を最優先課題とする日本政府、戦争責任は軍部にあるとして天皇を免責する国内世論、天皇を利用した民主化を推奨するアメリカという四つの異なる立場があったが、「9条制定の背景には、国際社会の期待に反して天皇制を維持しようとしたアメリカの思惑があった」と同氏。

 また、パリ不戦条約(1928年)、国連憲章(1945年)を経て、日本国憲法が制定されるまでの間に、2度の原爆投下があるという事実から、「人類の希望、祈り」が「正義の戦争」という概念を実質的に否定する9条として結実した歴史的必然性について語った。

 成立過程をめぐる「押し付け」憲法論については、「どんな国の憲法でも、その国の人だけで作ったものはなく、それまでに作られた法律の影響を受けている。外国人がかかわったというだけで憲法の正当性を否定するのは奇妙なこと。9条改正を主張する人々が回帰しようとしている明治憲法でさえ、草案を書いたのはドイツ人」と反論した。

 最後に、「9条の先駆的規定を世界に広げていくことが、恩恵を受けているわたしたちに課せられた責務」と呼びかけた。

     ◇

 崔善愛(チェ・ソンエ)、三宅進の両氏によるピアノとチェロの演奏に続いて、キリスト教から鈴木伶子氏(平和を実現するキリスト者ネット)、仏教から大河内秀人氏(浄土宗僧侶)が登壇し、意見を交わした。鈴木氏は、9条自体には賛成だが具体的な動きになると腰が引けるという教会の姿勢に言及。「社会や政治の問題は教会の仕事ではないと公言するキリスト者もいる。戦争がないから平和と考える人も多いが、数々の人権侵害を見過ごすことが最大の人権侵害である戦争につながっていくのではないか」と訴えた。

 大河内氏は、NGOを通して難民支援に携わる中で、湾岸戦争当時、国内の議論が9条を護るかどうかに終始し、現地の課題とは乖離していたことに疑問を抱いたと打ち明け、「異なる宗教が共存できるということは、数千年の歴史が証明している。9条を日本だけが持っていても意味がない。戦争をしなくても平和な社会が築けると示していくことが大事ではないか」と提起した。

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