ネットワーク構築が急務 錯綜する情報の〝交通整理〟を 2011年4月16日

 被災者を支援するための教団・教派を超えた連携が各地で生まれる一方、被災地域が広範囲にわたっていることもあり、支援を必要とする側がどこに支援を求め、支援を提供する側がどこに申し出ればいいかわからないという事態が生まれている。

 現地からの報告によると、被災状況は地域ごとに大きく異なり、不足する物資や人員も避難所によってさまざまで、必要とされている場所に必要な支援が行き届いていないという。そうした現状を打開するため、新たなネットワークの構築に向けた試みが始まっている。

 救援活動にあたる教会、諸団体と現地の需要とを円滑につなぐための「ハブ」となることを目的に、「東日本大震災救援キリスト者連絡会」が3月25日、お茶の水クリスチャンセンター(東京都千代田区)に立ち上げられた。

 地震発生後、実業人から「何かできないか」との要請を受けた榊原寛氏(ワールド・ビジョン・ジャパン理事長)が、中台孝雄氏(日本長老教会西船橋キリスト教会牧師、ハイビーエー代表役員)らと協議を重ねて発足に至った。

 連絡会には日本福音同盟(原田憲夫理事長)をはじめとする教団、教会、協力団体、企業などが会員として登録しており、さらに2009年の「宣教150周年」を共催した他教派にも幅広く参加を呼びかけ、ネットワークの充実を図りたいとしている。

 キリスト教会全体が情報を共有し、互いに必要を知り、必要に応えるために総合的なポータルサイト(http://drcnet.jp/)を構築することを当面の目標として、被災地の情報を集約、整理し、提供する拠点となる。

 事務所は同センタービル内に置き、常駐の専任スタッフが最新情報の更新を手がけ、電話でも対応できるように態勢を整える。その他、支援を目的とする各種イベントの後援なども予定している。

 会長を中台氏、副会長を榊原氏が務めるほか、実務委員として三木晴雄氏(玉の肌石鹸社長)、片山信彦氏(ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長)らも名を連ねる。

 事務局長の稲垣博史氏(アンテオケ宣教会事務局担当理事)は、「霊的、心理的なケアがわたしたちキリスト者の務め。そうしたニーズにも応えていきたい」と話す。

 問合せは同事務所(℡03・5577・4824)まで。献金先は、三井住友銀行千代田営業部(普通)2117746「東日本大震災救援キリスト者連絡会」。

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 キリスト新聞社でも、ツイッターと連動した「被災者支援サイト」(http://shien.tokinfactory.com/)を立ち上げ、情報の収集と発信に努めている。日々刻々と変わる状況に即応できるよう、ツイッターの利便性を生かし、『キリスト教年鑑』の情報とリンクしながら、全国の教会、団体、学校、病院などの基本情報、地図と共に、被災者支援のための情報を検索、閲覧できるサイトを目指す。新設された「キリスト新聞社被災支援情報事務局」のツイッターアカウントは「kirishin_shien」。

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 キリスト教だけにとどまらず、被災者を支援する宗教者らが情報を共有するサイト「宗教者災害救援ネットワーク」(http://www.facebook.com/FBNERJ)も開設された。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であるフェイスブックの機能によって、救援活動、支援物資、義援金などの情報を共有できる。

 発起人である稲場圭信氏(大阪大学准教授)のほか、黒崎浩行(国学院大学准教授)、樫尾直樹(慶応大学准教授)、櫻井義秀(北海道大学大学院教授)の各氏ら7人の研究者が呼びかけ人となり、今後設立される「宗教者災害支援連絡会」と連携する構え。

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〝悲嘆〟の理解も課題

 日本福音ルーテル教会(渡邉純幸総会議長)、日本ルーテル教団(粂井豊議長)、西日本福音ルーテル教会(佃博文議長)、近畿福音ルーテル教会(末岡成夫議長)の4ルーテル教団と日本福音ルーテル社団(中川浩之理事長)は、「東北関東大震災ルーテル教会救援(JLER)」(青田勇本部長)を3月24日に設置。28日より支援物資輸送プロジェクトを開始した。

 輸送実施は、NGOわかちあいプロジェクト(松木傑代表)が実施するもので、被災地で活動するNGOや団体のために、定期的に被災地に物資を運ぶ計画。同日、4㌧トラック3台に食糧を積み、気仙沼市と石巻市に届けた。4月4日の第2便では、気仙沼市、石巻市、多賀城市、いわき市、伊達市の5カ所に物資を輸送した。

 3月31日には、JLERの第3回救援対策会議がルーテル市ヶ谷センター(東京都新宿区)で開かれ、先遣隊による被災地調査報告が行われた。今後の活動として、日本聖公会東北教区災害対策本部と連携することや、日本福音ルーテル仙台教会に支援センターを設置することなどが提案され、現地で活動する専従スタッフ3人を募集することを決定した。

 ルーテル学院大学(市川一宏学長)は、キャサリン・シアー氏(コロンビア大学大学院社会福祉学専攻精神医学教授)による震災後の悲嘆についての論文「災害後の悲嘆(グリーフ)の理解と対応」を翻訳し、同大のホームページで公開。今後は、グリーフのセルフケアに関するカードも作成する予定。

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 カトリック東京教区の青年ボランティアと支援物資の受付窓口として活動を行う真生会館カトリック学生センターは、2度にわたりボランティアを派遣。責任者の杉野希都氏(学生センタースタッフ)ら7人は、仙台教区サポートセンター(センター長・平賀徹夫=仙台教区司教)と連携しながら、第1陣として3月23~28日、被災地に入った。

 真生会館に届いたガスボンベ、ガスコンロ、アルファ米などの支援物資を車2台に積み、仙台市に到着後、塩竃市と石巻市に分かれて、家屋の泥除去や家財道具を運び出す作業などを行った。

 石巻市で活動にあたった杉野氏は、「被害があまりにもひどく、ボランティアに行った人が皆苦悩している状態。日曜にはミサに出て、信徒宅の泥を出す作業に当たったが、その惨状に心が持たない」と話す。

 避難所指定を受けている寺院では自衛隊が入っているため、水と食糧は確保されていたが、被災から2週間ですでに16人が亡くなったという。

 杉野氏は、現地へ赴くことの意味を「状況を伝えること」と強調し、次のように語る。「日本人はモラルが高いと言われているが、そろそろ限界。ニュースも被災よりも原発事故に変わってきている。被災地の人がどう動いてどのように至っているのか、そして亡くなった人を証明できるのが僕たちだと思う」

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