宗派超え「脱原発フォーラム」 内藤新吾氏 〝公開討論の場を〟 2011年5月7日

「宗教者の使命を確認」

 3月11日の東日本大震災と津波によって生じた福島第一原子力発電所事故を受けて、脱原発フォーラム「原発事故について、テレビが教えてくれないこと」が4月23日、日基教団会議室(東京都新宿区)で開催された。日本キリスト教協議会(NCC)、カトリック正義と平和協議会、原子力行政を問い直す宗教者の会の3団体が共催したもので、諸宗教に呼びかけて連続の集会を開き、担うべき課題を共有することを目的としている。

 第1回となる今回の集会では、元原子炉製造技術者の田中三彦氏を講師に迎え、井生俊介(浄土宗僧侶)、内藤新吾(日本福音ルーテル教会牧師)、藤井学昭(浄土真宗僧侶)の3氏が報告。悪天候の中、130人が参加した。

 「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」の呼びかけ人でもある田中氏。「私たちにとって福島原発事故とはどういうものか」と題して講演し、今回の原発事故について、「原子力安全委員会、東京電力、原子力安全・保安院の3者がいずれもこういう事態に関して知識を持っていなかったということをさらけ出している」と指摘。福島4号原発の原子炉圧力容器の設計に関わった経験から、その構造について解説した。

 田中氏は、地震発生当日の原発のデータが公表されていないことを指摘し、その理由について、「おそらく『津波』ということ、『想定外』ということにしておくことで、これを特殊化することができる。そうすると、他の原発に及ぶ影響を津波だけで解決することができる。地震で壊れないで済んだということで話が通る」と主張。

 また、4気圧まで耐えられる原子炉格納容器が8気圧まで上昇して爆発した経路について関係者による説明がないことも問題視し、経緯が分からなければ損傷程度も分からないと述べ、修復計画についても「実行不可能だと思う」と語った。

 「原子力行政を問い直す宗教者の会」事務局長を務める井生氏は、震災後の同会の活動を報告。3月20日より被災者受け入れ施設の募集を開始し、300人を超える人数の受け入れ先を確保したことを報告した。また、避難すべきかどうかを判断する材料として「疎開フローチャート」を作成したことも紹介した。

 静岡県浜岡原発の危険性を訴えてきた内藤氏は、津波によって大量の砂が押し寄せることで、同原発の取水口がふさがれる可能性があることを指摘。同原発を止めても中部電力の電気の供給量をまかなえること、ガス複合発電にシフトすべきであることを主張した。また、同原発について安全・危険を訴えるそれぞれの専門家を交えた公開討論の場を中部電力が設けるべきであると提言した。

 茨城県東海村で地震に遭遇した藤井氏=写真=は、現地の状況を報告。1999年に臨界事故を起こしたジェー・シー・オー(JCO)から2㌔、東海第二原発から4㌔の地点であり、「非常に怖かった」と心情を明かした。「逃げる」という判断が特に子どもたちにとって難しいことを指摘し、「何が真実で何が真実でないのか、私たちが判断しなければならない時代になってきた。非常に恐ろしい時代に踏み込んできた」と語った。

 主催者の1人、NCC副議長の城倉啓氏は、「市民が声をあげて、宗教者も自分たちの使命をもう1回確認して、国家権力に対して闘いをしていきたい」と結んだ。

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