江原元塾長の解職無効 東奥義塾 理事会は即日控訴決める 2011年6月4日 

 学校法人東奥義塾(佐々木清美理事長)が経営する東奥義塾高校(弘前市)の塾長を任期途中で解職された江原有輝子氏が、塾長の地位確認と未払いの給与補償、理事長に対する損害賠償を求めた民事訴訟の判決が5月18日、青森地裁弘前支部であった。

 江原氏は2009年4月、海外で日本語指導をしてきた実績などを買われ、初の公募塾長として4年の任期で就任したが、10年3月の理事会の席上、緊急動議によって解職された。佐々木理事長は「理事会を非難し、学校や生徒、教員を誹謗した」「放置すれば学校自体が崩壊するとの危機感から、緊急に苦渋の決断をした」と主張していた。

 判決で村上典子裁判官は、原告の言動に配慮に欠ける面があったとしても、東奥義塾が「解職に必要な労働契約法17条1項に定める『やむをえない事由がある』とは言えない」として江原氏の解職処分は無効とし、契約中の給与や賞与を支払うよう言い渡した。一方、理事会での緊急動議に「違法性はない」として損害賠償の請求は棄却した。

 東奥義塾側は同日夜、臨時理事会を開き、約25分の審議の末、控訴することを決定。会見で佐々木理事長は「評価について納得しかねる点がある」とし、江原氏を塾長に任命した責任について認めた上で、解職は「学校を守るため」だったとの見解を改めて主張した。

 10人で構成される理事会では、同校の卒業生で聖書科の授業を担当した経験もある石川敞一氏(日基教団弘前西教会牧師)が、ただ1人控訴に反対した。

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 江原氏が所属していた日基教団弘前教会の教会員有志で立ち上げた「江原有輝子さんの訴訟について祈り・見守り・支える会」(杉沢徹代表世話人、略称「江原さんを支える会」)は翌19日、控訴を取りやめるよう同校に申し入れた。

 申し入れ書は、理事長自身が本人尋問において、江原氏が「経済的にも対外的にも学校に損失を与えていない」事実を認めたことを指摘し、「判決を受け入れ控訴しないこと」「江原有輝子さんの地位保全にあたり、その受け入れ環境を十分整えること」の2点を求めている。

 杉沢氏は、「判決の内容をよく検討したか疑わしい。教職員を含め、保護者や関係する諸団体の意見を集約したのか。理事会は今回の判決について、関係者にまず説明すべき。判決を重く受け止めてほしい」と話す。

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 判決後の会見で「正しいことのために立ち上がる大切さを、生徒たちにも伝えたい」と語った江原氏は本紙の取材に対し、「和解金を受け取って裁判をやめたいと何度も思ったが、筋を通したかった」と1年にわたる闘いを振り返った。

 初公判の前日には、自家用車に油がまかれるという悪質な嫌がらせもあった。「わたしが立ち上がったことによって、教会や学校で分裂が起こったのも事実。ただ、危機的状況が起きた時にそれをどう乗り越えていくかで、人間の真価が問われると思います」と話す。

 裁判が長引けば、たとえ復職できても残された任期はわずかとなる。「早く復帰したいと願っていますが、身の潔白が証明されても学校には戻れないという状況になった場合、それは神さまからのどんなメッセージなんだろう、と考えています。一つの道が閉ざされた時、新たな道が開かれるはず。与えられた時間を有効に使いたいと思います」と抱負を語った。

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