〝良いわざ生き続けて〟 ブラウンの功績偲び出版記念礼拝 2011年7月9日

『新約全書』を今読む 

 日本で最初の新約聖書全巻の和訳であるネイサン・ブラウン訳『新約全書』。その現代仮名字体版(新教出版社)の出版を記念する礼拝が6月18日、ブラウンが設立に携わった日本バプテスト同盟日本バプテスト横浜教会(横浜市中区)で開催された。関係者や同教会の信徒ら約40人が出席した。

 祝辞を述べた丹野真人氏(日本バプテスト同盟総主事)は、ブラウンの功績を振り返り、「『新約全書』を声に出して読むことを通して、神が与えてくださった日本語の優れた響きと意味の解釈によって、神のみ言葉である聖書を味わい、われわれの魂が養われることを信じる」と語った。

 同教会の大矢誉生牧師は説教の中で、聖書の訳語の違いに着目。『口語訳』で「らい病」と訳されていた言葉が、『新共同訳』では「重い皮膚病」に置き換えられたことを取り上げ、「元ハンセン病患者のことを考える時に、聖書の言葉が重荷を負わせてしまった出来事と、反対に希望を与えたということの二つの面が歴史の中にあるということを、『らい』という言葉の中に考えさせられる」と指摘した。

 その上でマタイによる福音書8章3節について、『新約全書』『新共同訳』『新改訳第3版』『口語訳』『文語訳』『岩波委員会訳』を比較。『新共同訳』で「よろしい」と訳されているイエスの言葉の原語には「意志」についての意味が込められていると述べ、「わが こゝろに かなふ」と訳されている『新約全書』の翻訳について、「より病者の側に立った、イエス様がその痛みをご自分のこととして引き受けられたキリストの言葉であると受けとめる」と語った。

教会壮年会有志が現代仮名に

 『新約全書』は、同教会員で聖書和訳史研究者の川島第二郎氏(キリスト教史学会会員)=写真=と、日本バプテスト同盟杉並中通教会牧師の松岡正樹氏が監修者として刊行に協力した。

 川島氏は、日本バプテスト横浜教会に所属したことをきっかけに、ジョナサン・ゴーブルの「摩太(マタイ)福音書」の研究を始め、ブラウンへと研究対象を広げていった。2008年に新教出版社より『志無也久世無志與(ルビ=しんやくぜんしょ)』の覆刻版を出版したが、本文が変体仮名で書かれた同書は、主に研究者を対象としたものであった。

 同年12月、日本経済新聞に掲載された川島氏の「聖書和訳に世界語への夢」という記事を読んだ日基教団相模原教会の壮年会「ヘルモン会」のメンバーが、「若い人にもブラウン聖書を読んでもらいたい」と、有志で『志無也久世無志與』を現代仮名字体に翻字する作業を開始。パソコンで原稿を入力し、およそ1年かけて9分冊を作成した。

 分冊の1冊目「まつたいでん」を作成した際に、川島氏からの勧めで、最終的に1冊に合本して出版するという前提で作業を進めることになった。分冊完成後には、08年の覆刻版とページ数や行数を合わせるため、あらためて原稿の組み直しを実行。変体仮名の読み違いなど間違いも多かったため、校正を松岡氏に依頼した。

 「ブラウン先生の良きわざがなお生き続けてほしい」と出版の喜びを語った川島氏。ヘルモン会会長の倉嶋晃氏は、「『天国』という言葉がどのように書かれているか興味を持ったことがきっかけだった。現代語にしたら面白いのではないかと思い、声をかけたところ8人が集まった。慣れるまでは大変だった」と苦労を振り返った。

 ネイサン・ブラウンは、米国バプテスト宣教師同盟の宣教師として1873年に来日。ジョナサン・ゴーブル夫妻とともに日本バプテスト横浜教会を設立した。1880年、『志無也久世無志與』を出版。新約聖書全巻の日本語訳としては初めてのもの。

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