バチカンを「傲慢」と非難 中国天主堂(カトリック)愛国教会 2011年8月13日

 【CJC=東京】中国国務院宗教局は、天主教(カトリック)愛国会による新司教任命を、バチカン(ローマ教皇庁)が承認していないからとして対抗措置に出たことで「極度に不合理で傲慢」な反応、と非難した。
 中国政府は、司教に任命された聖職者は「その信仰に忠実で、権威、権能がある」として、バチカンが新司教の権威を認めなかったことで中国のカトリック者多数の感情を損ねた、と指摘している。

 中国政府声明は、バチカンが不当に叙階された司教に対する「いわゆる破門」を、北京(中国政府)とローマ(バチカン)との間の関係改善のために、取り消さなければならない、との要求を含んでいる。中国政府はこれまでも、外交関係は、バチカンが台湾政府との関係を断絶し、中国カトリック教会の内部問題に「介入」しないと誓約した時にのみ可能だ、と表明している。
 天主教愛国会は適当な時期に、ローマ教皇の同意がなくても、さらに司教を叙階する準備を進めている。
 同会副秘書長のヨセフ・郭金才承徳司教が国営英字紙「チャイナ・デイリー」に語ったもので、7教区で司教叙階を行うという。
 具体的な日程は明らかにしなかったものの、準備作業はほぼ終わっている。候補者は宗教局地域委員会に承認申請書を提出する必要がある。他教区から参加する司教も日程調整を要求されている。
 バチカンと中国政府の対立は今回、司教がペテロの後継者(ローマ教皇)と結び付いた存在であるか、中国政府の役人として振舞うよう設定されたのか、という点にかかっている。
 中国政府は、新司教の任命を必要とする所は40教区あり、教皇の同意のあるなしに関わらず、任命すると公約している。

50年代に逆行」と福音宣教省局長
 バチカン福音宣教省局長のサヴィオ・韓大輝(ホン・タイファイ)大司教(香港出身)は、今後さらに教皇の同意なしに司教叙階が行われれば、中国とバチカンとの関係に「新たな逆行」となる、と7月12日語った。「政府と中国の為政者は、教会は政府によって管理されるべきだ、と確信している」とイタリア紙「ラ・スタンパ」とのインタビューで語ったもの。
 同大司教の指摘は、広東省汕頭(スワトー)教区で14日に、ヨセフ・黄炳章(ファン・ピンザン)神父が教皇の任命を得ないまま司教に叙階される僅か2日前に行われた。
 中国ではこの9カ月間、教皇の承認なしの司教叙階が相次いでおり、黄神父は3人目。いずれの叙階式典も中国政府公認の中国天主教(カトリック)愛国会が主宰した。同会は教皇の権威を認めていない。
 韓大司教は、「2010年11月と今年6月29日の不当叙階で、中国政府が『50年代』に状態を後退させた」と言う。「彼らは、司教を政府の監督下に叙階したいのだ。わたしたちは関係密接化を図って段階を踏んできたのに、と驚いている」として大司教は、カトリック教会が共産党政策の間接的な被害者となった、と信じると言う。
 「『政治局』で、最高指導者は課題を全部こなしている。中国で大変化が起きるまでにまだ18カ月ある。胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席(共産党総書記)の交代は必至だ。保身のため皆が非妥協的な左傾色を打ち出そうとしている。選挙運動の類型だ」とも韓大司教は指摘する。
 12日のインタビューは、福音宣教省が6月に楽山教区の不当叙階に関わった司教に警告を発した直後に行われていることが注目される。
 韓大司教は、問題の司教の中にはすでにローマに「圧力下にあること」や、「参画を強制された」と説明して来ている、ことを明らかにした。ただ中には「何事もなかったかのように自分の教区に戻った」司教もおり、「信徒の間に不安を引き起こしている」と言う。

対バチカン強硬姿勢の裏側
 バチカンの承認なしに、司教叙階を進めるなど、中国政府の強硬姿勢が目立つ。バチカン系「アジアニュース」のベルナルド・セルヴェッレラ編集長によると、それは強さと弱さの双方を反映したものだという。
 経済大国の一角を占めた中国にとって、もはや西側の支持を開拓する必要はなくなった。「2008年の北京五輪前には中国は、国際的に尊敬されるためにバチカンの承認を必要としていた。しかし今ではその必要がない」と同編集長。
 発言力が増したにも関わらず、北京政府は市民の間の不満への懸念を強めている。急速な経済成長と共に、中国は不平等、腐敗、環境破壊などと格闘してきた。そのことが、政権をして、カトリック教会を含め、組織的抵抗の潜在的可能性を排除しなければならないと決意させている。
 中国の指導者は、1980年代のポーランドの事態を中国の指導者は強烈に意識している。当時は教皇ヨハネ・パウロ2世が労働者の「連帯」運動を支持、共産党政権の倒壊とソ連圏解体につながった。こう指摘するのはポルトガルのカトリック大学国際関係専門のラクエル・ヴァズピント教授。
 昨年、ノーベル平和賞が中国の亡命民主活動家・劉暁波に授与されたのも北京にとっては衝撃で、その結果が、毛沢東の文化大革命以来という強烈な公式プロパガンダを進めることになった、と言う。
 香港の陳日君枢機卿が北京政府を厳しく批判しているが、同氏が中国問題に関する教皇アドバイザーであることからすると、「教皇に支持されていると思う」からこその発言だ、とヴァズピント教授は指摘する。

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