柴田千頭男氏が実践神学を指導 2011年8月13日

日本ルーテル教団 信徒有志の勉強会が10年目
 日本ルーテル教団「関東地区婦人の集い」の有志が中心となり、「宣教について学びたい」「深く聖書を学びたい」との思いから始めた信徒向け勉強会が7月で10年目を迎えた。同教団で50年にわたり牧師として活動してきた柴田千頭男氏(ルーテル学院大学・日本ルーテル神学校名誉教授)を講師に迎え、毎月第4水曜日、同教団東京ルーテルセンター教会(東京都千代田区)で開催している。

 2001年7月に「聖書研究の集い」として開始した当初の参加者は10人。その後、日本福音ルーテル教会、日本キリスト教会、日基教団、日本聖公会、カトリック教会などからも学生や信徒が集まり、現在の登録会員数は約60人となった。聖書の各巻についての学びだけでなく、「聖書における死理解」「日本語訳聖書――その背景と訳業について」「いま一度、宣教を考える」などのテーマを取り上げ、平岡仁子氏(日本福音ルーテル保谷教会牧師)、上村敏文氏(ルーテル学院大学准教授)をゲストに迎えた特別講義も開催してきた。
 柴田氏によると、一般的な聖書勉強会と異なる点は、聖書をその形成の歴史に従って読み進めてきたこと。新約聖書については、「福音書にパウロ書簡がどのように反映されているかを見ていこう」と、パウロ書簡から開始。旧約聖書は、その中心にある「バビロン捕囚」から勉強を始めた。
 聖書について一通りの学びを終え、今年4月からは、「実践神学勉強会」に名称を改めた。柴田氏が20年にわたり教鞭をとってきた「実践神学」(説教学・宣教学・牧会学)を信徒向けにまとめ、講義している。
 7月27日の第93回の勉強会には、35人が参加。「説教学」の4回目にあたる今回、柴田氏は、「いまの聖書は、解釈を通した翻訳された聖書」との理解から、ザアカイの話(ルカ19・1~10)を題材に、複数の聖書翻訳を比較することから始めた。テキストの問題を浮かび上がらせ、原典に近づくことが、「現代に聖書を語る場合でも前提になる」からだ。
 「テキストの背景にある当時の社会の状況を見なければ説教は書けない」と、直前の18章から「ファリサイ派の人と徴税人」のたとえを解説し、イエスの言葉の背景にあるエゼキエル書にも言及。「クリスチャンとは〝イエスのもの〟という意味。ザアカイのテキストはそういうダイナミックな言葉。牧師や説教者は、準備をしてそれを見つけるまで努力しなければならない。それが『釈義』。説教は土曜日の晩だけで書けるものではない」と述べ、神の言葉を語る説教の「怖さ」を強調した。
 その上で、説教が講義や講演と違い「福音の伝達の業」であること、イエスの言葉を模範とした不断の訓練が説教者の責任であることを説明しつつ、「それでも、わたしたちは神を知りつくすことはできない。ただ神のみがそれを示してくださるのである。それを知ることが、説教者の資格でもあるとも思う」と結んだ。
 日本ルーテル教団の課題の一つである「信徒訓練」に貢献したいと語る柴田氏。「実際に教会で『信徒訓練』と言っても、具体的に何をやるか、特にルーテル教会では見えてこない。説教学、牧会学、伝道学のいずれにしても、大きな課題であり、簡単にできることではない。少しでも役に立てればと、実践神学のことをまとめて信徒の人たちと分かち合いたい」と話している。

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