「心にふれる性教育」模索 医師・牧師・教師が共に事例研究 2011年9月10日

 キリスト教性教育研究会(会長・富永國比古=ロマリンダクリニック院長)が主催する第4回公開研究大会が8月18日、国際基督教大学(東京都三鷹市)で行われた。稲葉裕氏(実践女子大学教授、順天堂大学名誉教授)が「最近のエイズの疫学」と題して基調講演をしたほか、陳央仁(龍ヶ崎済生会病院産婦人科部長)、水谷潔(小さな命を守る会代表)、伊東良和(基督教独立学園高等学校教諭)、佐倉泉(サレジオ修道会日本管区本部勤務)の各氏が、医師、牧師、教師の立場からそれぞれ実践報告を行った。

 陳氏は産婦人科医の立場から、中高生の現状と公立学校での「性(生)教育」の実際について発題。学年が上がるにつれてセルフイメージ(自尊感情)が低下するとの調査結果を示しながら、愛される存在として生まれたことを伝える必要性を説き、「胎児は親の愛が性を通して生み出した奇跡」「性は祝福であり、それには範囲がある」ことを伝える講演内容を報告した。
 水谷氏は教会においても「でき婚」「結婚の破たん」が起きていることの要因として、「教育不足」「福音はすべてを貫く真理ではないとする信仰理解」「氾濫する劣悪な性情報」「両親や先輩信仰者の結婚生活への失望」の4点を挙げた。「教会の務めとして、安易な性行動をしないという価値観を広めていくことが、一番の中絶防止になる」と強調し、実際にキリスト教主義の学校で実践している講演の概略を紹介。
 「ずっと幸せになるための恋愛講座」として、創世記(2・24)をもとに自立、結婚生活、性生活というステップを順に解説している同氏は、単なる道徳としてではなく、将来の幸せを願う神のことばとして「今の恋愛のあり方は、将来の自分、結婚相手、子どもにまで責任が及ぶ。聖書のルールは一見不自由だが、不幸から守り、充実した結婚生活を送るため」と伝えるよう心がけているという。
 全寮制の共学校で高校生に向けて「性と結婚」の話を続ける伊東氏は、年10回の授業を毎回祈りながら準備している。「命は神によって与えられたものであり、結婚までに性的な関係を持たないという戒めは、祝福の中にある者に与えられた恵みだと強調している。性と結婚の話は単なる思想の問題ではなく、聖書の語る言葉をいかに聞くかということ」
 月刊誌「カトリック生活」(ドン・ボスコ社)で「愛と性のQ&A」を連載中の佐倉氏は、カトリック教会の指針について公文書などを引用しながら紹介。「教会の教えの中に、人間を深くとらえた豊かな知恵がある」とし、「善いものを知らせること」「悪の深刻さについて伝えること」の二つを課題として挙げた。
 後半のパネルディスカッションでは、「心にふれる」という今回の主題をめぐり、伝える工夫、フォローの仕方などについて討論。その後、参加した医師や教師、教会関係者ら約70人が意見を交換した。
 司会を務めた町田健一氏(国際基督教大学教授)は、「立場は異なるが、それぞれ自分の持ち場で何ができるか考えるための参考としていただきたい」と訴えた。

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