椎名麟三生誕100年 明治学院大学が公開研究会 2011年10月15日

 プロテスタントのキリスト者による文学運動にも力を入れた作家・椎名麟三の生誕100年を記念して、「椎名麟三と戯曲」と題する公開研究会が10月1日、明治学院大学(東京都港区)で開催された。同大学キリスト教研究所内キリスト教文化研究プロジェクトが主催したもので、約20人が参加した。
 椎名が設立した文学集団「たねの会」代表の三枝禮三氏があいさつし、小林孝吉氏(文芸評論家、明治学院大学キリスト教研究所協力研究員)の司会のもと、橋本茂(明治学院大学名誉教授)、成井透(作家、たねの会会員)、水谷内助義(青年座製作者)の3氏が講演した。
 橋本氏は、「生々と生きよう」「一日の苦労はその日一日だけで十分である」「過度の善は悪である」と書かれた椎名の3枚の色紙を取り上げ、椎名が「今を生きる」ことを大事にしていたと強調。「椎名麟三の文学は、クリスチャンでない人が読んでも、そこには何か『輝けるもの』があるのではないか。そんな魅力がある」と述べ、死後のことはキリストに任せて今を生き生きと生きようとする椎名の信仰が、現代社会にとって重要だと語った。 
 成井氏は椎名について、「本当の自由を追い求めて、それを獲得した人だと思う」と述べ、椎名がキリスト教の信仰の核心として捉えたものは「復活のイエス」であり、椎名がたどりついた「本当の自由」とは、「死という絶対性から自由になること」だと指摘。「第三の証言」「自由の彼方で」「蠍を飼う女」の戯曲3編を取り上げて解説した。
 水谷内氏は、1954年に創立された劇団青年座が旗揚げ公演で上演した椎名の「第三の証言」を「青年座セレクション」として09年に再上演したことを紹介し、「(同作品が)青年座の57年の歴史の理念になっていると言っても過言ではない」と語った。また、学校公演の一環として、椎名の「天国への遠征」を名古屋や福井の高校で上演した際、生徒たちが感情移入して鑑賞していたことを振り返り、「椎名先生の本の新しさはすごいと思った」と印象を述べた。
 小林氏は、「椎名さんの文学が、この3・11以後を生きるわれわれにとって、もう一つ新しい希望の物語として読まれていく、あるいは芝居として演じられていくことを期待したいと思う」と結んだ。

※椎名麟三=1911年、兵庫県の現姫路市に生まれる。家庭の事情から14歳で家を出、職を転々とする。鉄道の車掌時代に日本共産党に入党。31年に検挙されるが、獄中でニーチェの『この人を見よ』を読み、出獄後は文学、実存哲学に傾倒、小説を書き始める。47年、『深夜の酒宴』で文壇に登場。50年、キリスト教に入信。以後キリスト教作家として活動する。60年、文芸評論家の佐古純一郎、劇作家の高堂要らとともに「たねの会」を設立。73年、61歳で逝去。著書に『邂逅』『自由の彼方で』『美しい女』など。

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