震災後の死刑判決に違和感 世界死刑廃止デー記念集会で辺見庸氏 2011年11月5日

 死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90やアムネスティ・インターナショナル日本による世界死刑廃止デー記念集会「響かせあおう――死刑廃止の声2011」が10月8日、牛込箪笥区民ホール(東京都新宿区)で行われた。

 定員400人のホールは満席となり、ロビーのビデオで視聴する人も多かった。昨年に続き作家の辺見庸氏=写真=が「死刑はそれでも必要なのか――3・11の奈落から考える」と題し、講演。日本が保持する死刑制度の本質と非人道性を問い直した。

 石巻市出身の辺見氏は、高校時代の教師が放った「おもえ」という言葉の意味をずっと考えてきた。  

 「この世で最も単純な命令形。半世紀経ち、頭の中でうんといじくってきた。これは哲学でいう原真理であり、ラテン語でいうcogitoなのだと思う」

 集会の前日、「大震災と死刑問題を結び付けるのは死者に対する冒涜だ」という匿名電話が辺見氏のもとにあったことを明かした。「口先では死刑反対と言っても、実は死刑執行されても屁とも思わない人は多い。平気でメシを食う。『おもわない』限りはそうだ」と話した。

 3・11によるおびただしい死と喪失の只中で、この夏、裁判員制度で死刑判決が下されたことに、激しい違和感、怒りを覚えたという辺見氏。

 法理論上、死刑判決が可能で適法であったとしても、「明日人類が滅びるかもしれないときに死刑判決を下したり執行することは、英明なのか愚劣なのか――。考えた末、愚劣なことだと思う。これは『おもわない』人間のやることだ」と痛烈に批判した。

 さらに昨年夏、千葉元法相の執行命令は思想的にショックだったと振り返った。「革新とか民主主義を標榜している人間も容易にファシストになる。ドイツのコミュニストや民主主義者たちがどうやってファシストになっていったか、いくらでも出てくる」と語った。

 福島原発のメルトダウン以上に恐怖なのは、これまで見たこともない「気付かざるファシズムが来ること」と言う。

 この日は、シンポジウム「死刑囚の表現をめぐって」も行われた。2004年に死亡した死刑囚の母、大道寺幸子さんが残した基金で始まった死刑囚の作品募集(文芸作品、絵画、イラストなど)に寄せられた作品が展示、紹介された。

 現在、確定死刑囚は120人。法相が長勢甚遠、鳩山邦夫らだった頃の確定死刑囚は100人前後であったことを想起すると、今後、法務大臣の意向によってどれほどの死刑執行が行われるか予断をゆるさない。

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