生きる意味への援助 宗教倫理学会学術大会 京都 2011年11月12日

 宗教倫理学会(高田信良会長)は12回目となる学術大会「スピリチュアルケア&グリーフケア」を10月22日、京都市南区の龍谷大学アバンティ響都ホールで開催した。同学会会員7人による研究発表が行われた。

 研究発表で、杉岡良彦氏(旭川医科大学医学部講師)は、テーマ「スピリチュアルケアでの医療と宗教の関係を考える」に基づき話した。
 牧会カウンセリングと、現在の精神療法の中心的役割を担う「認知療法」に注目し、医療現場や宗教的実践の場でスピリチュアルケアがどう可能であるかを考察した杉岡氏。
 「スピリチュアルケアへの注目は、近代以降に忘却される傾向にあった、より全人的な人間的生の再発見にも関わっている」とし、「医療者は、牧会カウンセリングなどの治療的根拠について謙虚に尊重する一方で、科学的にその治療効果や予防効果を検証することで、この分野への医療者の理解を促し、両者の建設的関係の構築にさらに寄与すべき」と語った。
 「東西霊性交流における『霊性』と『対話』の位置づけ」と題し発表した武藤亮飛氏(筑波大学大学院)は、宗教間対話、相互理解を深める試みとして、日本の禅宗とカトリックの修道院との交流について論じた。
 1979年から始まったこの「東西霊性交流」は、ほぼ4年に1度行われ、日本の禅の修行僧と欧州の修道士が互いの禅堂と修道院を行き来し、それぞれ生活体験をしているという。質疑では、「『霊性』とは何か」といった質問や禅とカトリック、それぞれが目指す霊性の違いについての意見があった。
 「軍隊・軍人と宗教」との題目で発表した石川明人氏(北海道大学助教)は、宗教と平和という重大テーマの一環として、軍人の信仰、軍隊内での宗教活動をどう捉えるべきか問題提起した。
 自衛隊内のキリスト教に着眼し、自衛官キリスト者らによる団体「コルネリオ会」を紹介。同会発行のニュースレターなどの資料から、自衛官がかつて教会でどのような立場に置かれていたのか、事例をもとに解説した。
 また倫理的な観点で、原爆投下に際し従軍チャプレンが祈祷を行っていたことなどから、戦争や平和をどう考察すべきであるのか、内村鑑三などの例を挙げて語った。「非戦論」を唱えていた内村は戦争を地震などと同様の「天災の一種」と見なし、軍人への慰藉は当然のことであると考えていたという。「なぜ軍人であってはいけないのか、というのは古典的な問題。教会組織と軍隊組織は非常に似ている」などのコメントが上がった。
 さらに午後の部では、「スピリチュアルケア——生きる意味への援助」と題し、村田久行氏(京都ノートルダム女子大学教授)が公開講演。続いて行われたシンポジウムでは、棚次正和氏(京都府立医科大学教授)による司会のもと、村田氏に加え、岩田文昭(大阪教育大学教授)、室寺義仁(高野山大学教授)の両氏がパネリストとして登壇した。

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