出版販売協会出版部会主催 公開パネル「震災とキリスト教ジャーナリズム」 2011年11月26日

 キリスト教メディアによる震災報道を検証する公開パネルディスカッション「震災とキリスト教ジャーナリズム」が11月11日、キリスト教出版販売協会出版部会(秦一紀部会長)の主催により、日本キリスト教会館(東京都新宿区)で行われた。パネリストには、各媒体の記者・編集者として伊東正道(信徒の友・こころの友)、倉田夏樹(福音と世界)、根田祥一(クリスチャン新聞)、松谷信司(キリスト新聞・ミニストリー)の各氏が招かれ、副題に掲げられた「私たちが伝えたこと・伝えられなかったこと」について、読者も交えて意見を交わした。

被災地を忘れないために
 新聞と雑誌という二つの媒体を持つキリスト新聞社の松谷氏は、週刊、季刊というそれぞれの発行頻度と役割に応じた報道の仕方を模索してきたと述べ、実際の紙面と編集意図を紹介。
 記者として1995年の阪神・淡路大震災も経験した根田氏は、当時との違いを比較しながら、フェイスブックなどを駆使して情報を集め、紙面に先立ってサイト上で記事を公開した経緯を振り返った。
 倉田氏は、他誌とはやや異なる『福音と世界』(新教出版社)のオピニオン誌としての役割について述べ、震災に先立って企画された「原子力政策」特集や、その後の震災特集での執筆者とのやり取り、編集部に届いた読者からの声について語った。
 今回の企画発案者でもある伊東氏は、被災地に度々足を運び、実際に多くの被災者と出会う中で見えてきた実情について報告。被災地のことを忘れないためにも、折に触れてメディアの役割と課題を検証する必要があると訴えた。
 「伝えられなかったこと」として根田氏は、「限られた紙面で、この震災を神学的にどう捉えるかといった点まで踏み込めなかった」とし、伊東氏は、媒体の性格上、取材したすべての事柄を活字化するのが難しいという葛藤を吐露。この日発行された「説教黙想アレテイア」特別増刊号(日本キリスト教団出版局)でも、仙台と東京で行われた座談会には少なからず温度差がある、と語った。
 松谷氏は、「当事者に寄り添いつつ、ある程度の距離を保って客観的に報道できるよう心がけた」と振り返り、表面には出にくい本音に耳を傾けることの難しさを説いた。また、『信徒の友』にカトリックを含む他教派の動向や、漫画家らによる「オタパックQB」の取り組みなどが掲載されたのは画期的と評価。
 司会者からは、「情報源が圧倒的に男性の教職者に偏っている」「掲載された記事や出版物をめぐる相互批判や紙上討論があってもいいのではないか」との問題提起があった。
 出版部会は、引き続き、今回のような企画の開催を検討したいとしている。

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