「旧約学と説教」テーマにシンポ 礼拝での位置付けと活用 2011年12月10日

 日本旧約学会主催のシンポジウム「旧約学と説教」が11月3日、青山学院大学(東京都渋谷区)で行われた。樋口進氏(関西学院大学教授)による司会のもと、越川弘英(同志社大学教授)、平野克己(日基教団代田教会牧師)、大島力(青山学院大学教授)、並木浩一(国際基督教大学名誉教授)の各氏がそれぞれ発題。同学会員を含む約60人が参加し、意見を交わした。

「預言者的想像力」働かせる
 「今日の礼拝と説教における旧約聖書の位置づけと活用」とのテーマで発題した越川氏は、国内でおよそ3分の2の教会が旧約聖書を用いていないという現状を指摘。説教の形態の中で「日課型説教」が、「一定の主題を前提としながら、常に旧約聖書を含む複数の聖書テキストを用いて、それらを相互に響かせ合いながら、メッセージを生み出すことをねらいとしている」として、旧約聖書の活用という点からも推奨されるとした。
 平野氏は、「教会の礼拝説教と旧約聖書」とのテーマで発題。「旧約聖書を欠落した説教者と教会は、主イエス・キリストを理解することができず、教会は自分たちが誰であるかを理解することもできない」「説教を喪失した旧約聖書学はルーツと目的を失う」と主張した。
 説教学の変遷を概観しながら、「90年代までに、説教とはアートの一つであると言われても衝撃を受ける者はほとんどいなくなった」と述べ、2000年代は百花繚乱の様相だが、それでも「ポスト・リベラリズムの説教」に関心が集中しており、そこに旧約聖書の積極的な役割が存在していると指摘した。
 大島氏は「預言者的想像力と説教」とのテーマで、大江健三郎の想像力論を紹介しながら、説教黙想にとって想像力が重要であることを強調。旧約預言者の根本的特質は、捕囚前の預言者に見られる「根拠が示されない災いの確信」があり、その未来確信から現実に対する批判(審判)が語られる点にある、とした。
 預言者が多くのイメージやメタファーを用いた理由について、現実についての知識と情報を効果的に聞き手に提供するだけでなく、聞き手がイメージの世界に招かれ、参与し、現実世界に対してこれまでとは違ったアクションをするように促されるという効用を挙げた。過去に書き記された聖書テキストに基づいて説教をする場合、語り手は「預言者的想像力」を働かせる必要があるのではないか、と提起した。
 並木氏は「旧約学と説教」と題して発題。「聖書の言葉のリアリティを捉えるには、聖書自身における想像力の働きに対する洞察と、想像力を持って聖書の言葉の読み取りを行う必要がある」と述べ、「想像力を働かせての聖書の読みは、聖書のレトリックの重視と読み解きへと拡張される必要がある」と強調。「ヨブ記」は、論理と想像力と結合したレトリックの一つであるアンティフラシス(語意反用)を多用しており、その探求はテキスト理解を変え、説教に大きな影響を与える、と解説した。
 シンポジストの発題の後、活発な質疑応答がなされた。参加者からは、「旧約学と実践神学の現場が緊張感あふれる関係を続けていることが重要であり、その意味でこのシンポジウムは非常に意義があった」との感想が聞かれた。

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