〝シスター知るきっかけに〟 カトリック信徒が電子書籍を個人出版 2012年1月21日

 「若い人がシスターを知るきっかけになれば」と、フリーランス・ライターでカトリック渋谷教会信徒の渡辺麻実さんが、電子書籍『呼ばれる人生1――シスター保坂信子が修道女になるまで』を個人で発行した。12月からデジタルコンテンツを扱うインターネットサイト「DL―MARKET」を通じて販売している。価格は500円(税込)で、売上の半分を、同書で取り上げたシスター保坂信子さん(仮名)が所属する修道会に、残りの半分を、カトリック教会の社会福祉部門である「カリタスジャパン」に寄付する。

 生後半年で幼児洗礼を受けた渡辺さんは、幼稚園から高校までをプロテスタント系のキリスト教主義学校で過ごした。東京大学法学部を卒業後、文藝春秋で雑誌編集に携わり、結婚退職。現在はフリーランス・ライターとして活動する一方、法律の知識を生かして東京工芸大学芸術学部マンガ学科講師として「マンガと知的所有権」の講義を担当している。

 学生時代から徐々に教会から足が遠のいていったという渡辺さん。30代になり、離婚などの悩みを抱えていたころ、近所のカトリック教会に立ち寄ったことをきっかけに、2003年にカトリックに改宗。カトリック教会には「自分が受け入れてもらえそうなイメージがあった」と振り返る。

 シスターの話を聞くうちに、その召命感に関心を抱くようになった。「若い人が(修道会に)入ってくれない」という声を耳にし、シスターの存在を世間の人に知ってもらおうと、さまざまな修道会に所属するシスターにインタビューし、それぞれの「神さまに呼ばれる」過程を1冊の本にまとめる計画を立てた。ところが、取材に応じてくれるシスターが少なく、掲載許可を得ることが難しかったこともあり、今回許可が下りた1人の話を発表した。

 電子書籍にした理由は、原稿の分量が少なくても販売ができること。販売手数料が15%と比較的安いことから「DL―MARKET」での販売を決め、どのような端末でも読めるようにと、PDFファイルの形式をとった。「どういう形でも、この本を読んでくれる人がいれば」と、複製が可能な「DRM(デジタル著作権管理)なし」の形態で販売しているが、教会の集会などで使用する場合は寄付になるので購入してほしいと語る。

「わたし」を呼ぶ声に耳澄ませて

 個人で作品を発行することは手軽で自由な反面、校正や宣伝などすべて自分で責任を負わなければならない。出版社での編集経験をもとに、試行錯誤を続けている。「出版社が電子書籍を出しても売れないと言っている中で、個人でどこまでやれるか挑戦したい」

 震災後、寄付やボランティアに対する世間の意識が高まっていたこともあり、売上の全額を寄付することを決意。「買ってくださる人がいることによって、自分の労力を寄付できるのでありがたい」と話す。寄付の日付や金額などは販売ページで後日報告する。

 同書の主な対象は、「自分探し」という言葉を使う10~30代の女性。この言葉に渡辺さんは違和感を覚えるという。「理想的な『自分』像がまずあって、それを肯定するものを探していくという姿勢は傲慢な気がする。自分は未完成の身だけれども、どこかに『わたし』を呼んでいるものがあるのではないかと思って、その声に耳を澄ます姿勢の方が、結果もついてくると思う」

 同書を読んだ信徒からは、「教会の修養会で教材として使いたい」という声もあったという。今後シリーズ化していく予定だ。

 同書は、「DL―MARKET」の販売ページ(http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/176581/language/ja)で購入できる。

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