公益法人改革 教界団体揺さぶる 2012年1月28日

  一般社団、財団法人法、公益法人認定法、関係法律整備法の関連3法が2006年に成立、08年12月に施行されてから3年の月日が流れた。従来の財団、社団は特例民法法人として位置づけられ、13年11月末までの移行期間中に、公益認定を受けるか、一般法人への移行、または解散するかを判断し、手続きをとらなくてはならない。煩雑な移行手続きは大きな負担となっており、戸惑っている法人も少なくない。本紙はアンケートなどで現状を探ると共に、自ら公益認定を得るために努力した東京YMCA副総主事の本田真也氏に寄稿してもらった。

「作業が煩雑」「今後に不安」

 キリスト教関係団体は、設立当初から自らの公益性を強く自覚し、同時にその活動の根幹にイエス・キリストの愛の教えを置き、その実現に努めてきたところが多い。

 ただ今回の「公益法人改革」は政策の一環として打ち出されているだけに、「公益」についても認定当局の判断に左右されないよう法人側の主張を押し出していく必要もある。

 また「公益法人化」の一つの有利な点は、寄付金などへの課税免除があるが、キリスト教団体の収入に占める寄付金の比率はさまざまで、「公益法人」と名乗ることで社会的な信用を高める以上の効果が期待できない例も出ている。特に小規模法人の場合、移行申請にあたる人材が見つからず、外部に実務を発注して、多大な手数料に悩まされることも問題になっている。

 「全体としては望ましい変更と認識するが、小法人には少年ダビデにとってのサウルのよろいのようなところがあり、正直困惑している」とか、「法人のミッション、組織の運営や事業の立案などを会全体で見直す良い機会となったが、会社法をモデルに想定された法律に基づいての整備は、当法人のような小さな団体にとっては大変厳しい。今後も大量の書類作成、複雑なルールに沿っての財務処理を実施し続けていくことなどにかなりの時間を割かれそう。ボランティアが大きな役割を果たしている当方に、新制度の厳格なルールを当てはめると、今後の影響が心配」という声が正直なところだろう。

〝公益増進〟の成果に疑問も

 今回の「公益法人改革」では、一度「公益法人」に認定されると、公益性維持のための基準が守られているか当局の目も厳しくなり、一度認定を取り消されると、公益目的のために取得した財産の処分など厳しい対処を迫られる。

 そこでひとまず「一般法人」に移行し、将来、改めて公益申請を検討するところも出てきた。移行期間は、来年の11月末まで。いずれにしても駆け込みでの手続きは危険だという指摘もある。一般法人として発足したところには太平洋放送協会、真生会館、聖書考古学資料館などがある。

 すでに公益法人として認定された法人は日本キリスト教海外医療協力会、早稲田奉仕園、大阪YMCA、神戸YMCA、東京YMCA、大阪YWCAなど。

 「『民による公益の増進をめざして』といううたい文句とは異なり、行政庁による指導(?)、相談、助言、誘導が厳しく、当方の自由裁量が制限された。法解釈の幅が広く、担当者によって理解が異なる印象を持った。公益目的事業については収支相償が求められるため、ある種、ある量の収益事業を持たないと公益財団としての運営に窮する可能性を懸念している」との指摘があった。

 国際的組織に加盟しているある法人では、認定を申請する中で、組織の目的を定款に入れ、それに基づいて倫理規定を作り、会員規則も整備したが、そこに至るまで何度も会員集会を開き、内閣府公益認定等委員会事務局に、説明のため通った。

 ただ新法人となれば、企業並みの透明性と、キリスト教を基盤とする公益法人としての社会的責任を背負い、自立した法人として歩んでいかなければならない、と公益法人の道が安易なものでないことを覚悟したという。

 「主務官庁という親から離れ、身一つでこの競争社会を生きていかなければならないことに気づいたという感じか」

 多くの課題を残しながら、期限までは当面こうした混乱が続きそうだ。

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