怯むことなく多様な公益活動を 公益財団法人東京YMCA副総主事 本田真也 2012年1月28日

 今般110年ぶりと言われる抜本的な公益法人制度改革が進行中である。対象は、2万5千ほどある財団法人と社団法人である。当該法人にとっては火急の課題となっている。

 キリスト教界にも少なからず対象法人があり、目覚しい働きを展開し、長い歴史を持つものも多い。改革の内容は後述するとして、現在すでに認定公益法人となった法人もあれば、その作業の煩雑さや公益目的事業項目に照らし合わせることなどもあり、公益認定を受けることを回避し、逡巡している例もあると思われる。東京YMCAは、青少年の精神、知性、身体の全人的成長を願う働きを進めてきた事業型公益法人であるが、2011年4月1日付にて公益財団法人として認定を受けた。その経験を踏まえて、改めて公益法人制度改革をどのように捉え、キリスト教精神に基づく公益活動展開への一意見を述べたい。

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 改革の骨格は、民法23条から目的法の改革3法にて制定し直し、法令により詳細規定し、主務官庁制を廃止し県知事や内閣府のもとに集中させ、責任の明確化と透明性を持たせるものである。

 そして、既存の公益法人は2013年11月までに「一般財団」か「公益財団」へ移行するか、解散等の道を選択しなければならない。「一般財団」については、新規は定款等の要件もあるが、登記だけで設立できる。ただし、緩い規制のもと玉石混交となり社会的認知評価が下がる恐れもあり、普通法人並課税となる。「公益財団」は、要件は多々ある。主な点は公益目的事業を主たる目的とすることや数値基準が設けられており、公益目的事業ごとの収支が大幅な黒字にならないという収支相償、公益目的事業比率が50%以上となること。そして、遊休財産が1年間の公益目的事業実地費用を超えないなどである。

 さらに特記すべきことは、寄付優遇税制制度が備えられ、この6月の租税特別措置法の改正により、一定の要件のもと個人寄付については所得税の税額控除ができるようになった。寄付文化の貧困さについては論議され、寄付優遇税制度のハードルの高さが指摘されていたが、大きな一歩を歩みだしたと言ってよいだろう。今回の寄付優遇税制伸展の背景には、1998年に発足したNPO法人が弛まなく法制度の改革、税制改革を求める活動を続けたことが功を奏していると思う。公益法人もこれからが始まりとして同様の活動が求められる。

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 今般の公益法人制度改革は、制度には実務的な課題があるものの民間非営利活動を社会システムにしっかり植えつけるものであるとわたしは認識している。寄付優遇税制度が早くも税額控除まで進展したことは驚きであるが、「民が担う公益を増進」を、与えられた制度でなく「民」のものとし、民により公益を生み出していく機会として積極的に捉える必要はないか。

 一方、もし法人のセルフ・ガバナンス(統治組織)に課題があり硬直的であったなら、佇まいを再構築する良い機会であり、新たな公益活動を模索するときではないか。寄付優遇税制度の充実を求めることは、公益法人にとっては会計における透明性と説明責任を果たす責務があることと表裏一体である。市民が寄付をし、活動が促進され、情報公開のもと評価を得て、また寄付がされる。そこに寄付の循環が生まれる。それこそ寄付文化の醸成の基盤であろう。その醸成に関わるかどうかのチャレンジを受けているとも言える。

 現在移行法人数は国所管6625法人の15%ほどという。遅々たるものであることは、制度と公益法人の実態との乖離や支援体制の不備があると思われる。特に行政側へ求められることは、相談体制の充実、申請への柔軟な対応と迅速さである。公益法人協会が主催した内閣府との対話集会があったが、そこで私は次のように述べた。「本改革が民による公益促進の契機となると思うが、制度の煩雑さにより公益活動への取り組みを躊躇させたり、申請するために多額の費用をコンサルタントへ投じるとなればそれは本末転倒である。相談業務の充実や規模の小さい法人への支援策が肝要である」と。

 内閣府公益認定等委員会委員長の池田守男氏は、非営利な民間の活力を社会に対していかに定着させていくかが重要であり、淘汰することではないとし、公益認定等委員会HPにて行政が積極的にサポートしていくことを表明している。

自負をもって多様な活動、発言を

 さて、キリスト教界の公益法人側にとっても公益認定を受けることに躊躇するハードルがあることについて言及したい。公益目的事業項目と数値基準である。認定要件には、公益目的事業を主たる目的とすることがあり、事業を23項目の公益目的事業の範疇に当てはめることになる。そこにひとつのハードルがある。改革3法のもとでは、原点を示す意味で「伝道」といった言葉は用いることはできないが、その信仰の実践、証としての活動を行う意味でその公益事業を23項目に当てはまることは可能である。

 2011年9月3日付の「中外日報」では、財団法人全日本仏教会が公益財団法人移行認定への答申を受けたと報じている。「仏教文化の宣揚等を通じて、世界平和の進展を推進する事業」を公益目的事業としている。このことは大変喜ばしいことである。歴史的にみて、行政が取り組む前よりまず民間、特に宗教的精神性をもった個人、団体にて取り組まれた公益事業は多々あり、キリスト教界にある公益法人も同様のルーツを持つものと思われる。そのことに自負をもつべきである。確かに直接的な伝道、布教はできず、いわゆる、政党支援、選挙活動はできないが、公益認定を受けてもそれぞれの使命と行なう公益事業に照らして行政に対して、社会に対して自由な多様な活動、発言はできるものであろう。

 次に、数値基準要件を満たすために、公益法人会計基準への準拠には会計事務所の力を得ることも有効である。ただ、申請実務にてコンサルタントの助言を受けることもあろうが、やはりその法人の使命と事業に熟知している者が、今後の決意も含めて向き合うことが大切である。数値基準の数字のみで白黒着けてしまい、いとも簡単に一般法人を薦める傾向もある。法令主義でありながらも、行政側と公益法人が、民の力を活かすことに知恵を凝らすものでなければ意味がない。自己規制することは公益進展にマイナスである。

 「公益」については、法によれば利他のため、不特定多数の利益といった言葉になるが、「民が担う公益」という場合、地域社会のニーズをそれぞれの使命のフィルターを通し、多様な活動を通して、命が守られ、育まれ、人間性が保持される取り組みではないか。それは、公共性論議に潜む同質化や排除の恐れとは一線を画したもので、多種多様な人々に関わり対応していくことではないか。キリスト教の確固たる信仰と精神性が、先達の歩みの中で、脈々と繋がり、福祉、教育、医療等の分野で公益活動を培ってきたのではなかろうか。そのことを覚え、公益法人制度改革に臨みたい。(ほんだ・しんや)

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