〝今手にしているものに感謝〟 「教会とインターネット」セミナーで熊谷雅也氏 2012年1月28日

 「日本カトリック映画賞」の授与など、放送・映画・インターネットなどのメディアを使った活動を展開しているSIGNIS JAPAN(カトリックメディア協議会・千葉茂樹会長)は、「教会とインターネット」セミナーを1月14日、カトリック目黒教会(東京都品川区)で開催した。

 15回目となる今回のセミナーは、震災後の被災地と教会をめぐる環境の中で、インターネットがどのような希望を伝えてきたのかを検証することを目的に、講師に熊谷雅也氏(イー・ピックス出版/大船渡印刷代表取締役社長)を招き、「震災・教会・インターネット――震災で問われた『福音(Good News) 』とは何か」をテーマに開催。カトリック仙台司教区広報委員会委員長の岩井誠氏による報告も行われ、約40人が出席した。

イー・ピックスの創設と被災語る

 岩手県大船渡市で大船渡印刷を営む熊谷氏。「活版印刷の父」として知られるグーテンベルクを、「情報の加工と流通」の先駆者として捉え、「21世紀のグーテンベルクになりたい」と、2001年にイー・ピックス出版を立ち上げ、印刷業と並行してホームページ制作やCD制作を始めた。

 同年秋、カトリック大船渡教会信徒で医師の山浦玄嗣氏から『ケセン語訳聖書』の出版を持ちかけられ、02年から半年おきにマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四福音書を刊行。04年には、当時の教皇ヨハネ・パウロ2世に同聖書を献呈。9年間にわたり、山浦氏とともに日本全国をまわり、200回にも及ぶ講演を行ってきた。

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 昨年の震災に伴う大津波で、同社の社屋は完全に流されてしまったが、鉄筋コンクリートの倉庫は天井が崩れたものの、かろうじて残り、中から3千冊の聖書を運び出した。それを知った三浦綾子記念文化財団副理事長の工藤正広氏から、津波の洗礼を受けた聖書を定価で販売したいとの打診があり、「お水くぐりの聖書」として新聞やテレビで取り上げられ、全国から注文が殺到。数カ月後には郵便局の口座が1千万円台にまで到達するほど売上を伸ばした。

 震災前から出版を計画していた山浦氏の新刊『ガリラヤのイェシュー 日本語訳新約聖書四福音書』のデータが入ったパソコンが津波で流されてしまったが、『ケセン語訳聖書』の売り上げを復興資金として使い、10月末に出版を果たした。

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 熊谷氏は、3月12日の朝に思い浮かんだ言葉として、「失ったものに絶望するのではなく、今手にしているものに感謝、そして希望」という言葉と、山浦氏から教わったというヘブライ語の「ダーバール」という言葉を提示。「ダーバール」が「神の言葉」と「出来事」を意味する言葉だと説明した上で、「自分が経験することの中に神さまの思いがあるのだと考えて、その瞬間から自分にとっての出来事が神さまの励ましとして素直に感じられる状態になった。それ以来、出来事がすべて嬉しくなってしまった」と語った。

 また、「天国」「神の国」という言葉を山浦氏が「神様のお取り仕切り」と訳していることに触れ、「震災を通して個人的には『神様のお取り仕切り』を実際に体験した。神さまはいつもそばにいらっしゃる。全国から手紙やインターネット、メールを通して励ましの言葉をいただく。被災した立場になれば、自分たちに心をかけてくださる方々がいつもそばにいてくれることが分かるメッセージが常に入ってくることは、とても励ましになって力づけられる」と感謝を表した。

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 岩井氏は、「新しい創造」をテーマに掲げる仙台教区の活動の一つとして、同教区が制作した震災の映像を紹介。「今までの教会を考えてみると、どうしても内向きだった。それが、この震災後に外に向くようになった。社会に目を向け、そこに出かけて行っていろいろな人と話をするのが教会の姿。本来の姿になりつつあるのではないか」と述べた。

 フリートークで熊谷氏は、この10年間でメールでの注文が増え、特に年配の女性によるインターネット利用が増加していることに言及。司会を務めたSIGNIS JAPAN副会長の土屋至氏(清泉女子大学講師)は、フェイスブックなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の福音宣教への活用を課題として指摘した。

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