中国プロテスタント教会から王教授招く 〝公認教会の課題直視〟 2012年2月4日

 日基教団改革長老教会協議会(阿部祐治会長)は1月16日、中国プロテスタント教会で指導的立場にある王艾明(ワンアイミン)氏(南京金陵協和神学院副院長)=写真=を招いた講演会を日基教団青山教会(東京都港区)で開催した。

 勃興しつつある中国プロテスタント教会は、公認教会(三自愛国教会)でも2千万人以上、非公認教会、いわゆる「家の教会」でも3~5千万の信徒を擁すると言われている。王氏は、偏狭なナショナリズムではなく、宗教改革的伝統や基本信条を重視しながら、現在の公認教会の非神学的傾向や、過度の政治化傾向に警鐘を鳴らす気鋭の神学者である。

 王氏に同行して通訳を務めた松谷曄介氏(日基教団八幡鉄町教会牧師)によると、三自愛国教会は政府寄りでリベラル・非福音的で、「家の教会」(「独立教会」「自由教会」)は福音的という単純な二項対立で見られがちだが、内実は複雑で、三自愛国教会内にも福音主義の信仰を堅持しつつ、政府認可の枠組みの中で努力している牧師もおり、王氏もその一人。公認教会に属しながら三自愛国教会の現状を厳しく批判し、「家の教会」を対等に評価するという立場を堅持している。

 王氏は「中国プロテスタント教会の歴史と課題」と題する講演で、イギリス人宣教師ロバート・モリソンが1807年にマカオで宣教を始めて以来、約200年に及ぶプロテスタント教会の歴史を形態学の観点から三段階(1807年~40年ごろ、40年ごろ~1949年、49年~現在)に分けて概観。

 特に孫文の継承者である国民党政府が台湾に撤退するまでの第二段階後期から、中国共産党が中華人民共和国を建国(1949年)する第三段階前期にかけての時期に注目し、孫文の思想からキリスト教信仰という基盤が分離されたことによって、「欧米のミッションと中国国内の様々なキリスト教会は、知的・学的優位性も将来への見通しも持てないまま、キリスト教信仰の普遍的真理を中国の国家的命運および前途に委ねなければならなくなった」と指摘した。

 公認(体制)教会は、「政府の宗教局によって任命された両会(三自愛国運動委員会=TSPM、中国基督教協会=CCC)の専任職員」「両会の管理下にある各地の教会の牧師、伝道者」「両会管理下の教会、集会所の礼拝に来る流動的な信徒」の三者で構成されている。中国の場合、非公認(非体制)教会がルターやカルヴァンの神学的伝統に倣い、教会制度や信仰規範を形成し始めているのに対し、両会組織は指導的立場にあった丁光訓主教が2002年に引退した後、官僚機構化するとともに非神学化と非教会化の勢いに拍車をかけているという。

 王氏は、中国のキリスト教会が克服すべき課題として「民族の苦難の記憶に基づく偏狭な民族主義」「政府の公認か否かによる法的保護の有無」「神学的、政治的、倫理的領域における教会性(エクレシア)の樹立」を挙げ、とりわけ悪しき「聖書主義」を乗り越え、「教会的信仰」を築く必要性を説いた。

 講演後、会場からは中国の現状について質問が相次いだ。王氏は、「中国のキリスト教会には、政府との和解、革命の歴史との和解、無神論との和解、そして神との和解という四つの〝和解〟が必要」「中国が市民社会として成熟できるか否かは、自発的宗教団体(FBO=Faith based organization)を容認できるか否かにかかっている」「信徒の増減にかかわらず、キリスト教の真理が知識人層に影響を与え、社会的変化に貢献できることが重要」と応答した。

 今回の来日では、立命館大学アジア社会研究会や東京神学大学にも招かれて講演したほか、聖学院大学、東京基督教大学、東京大学も訪問し、各校の教職員らとも懇談した。今後、さらに日中両国間において自由な形での神学交流が深まることに期待が寄せられている。

王艾明氏 略歴

1963年 江蘇省生まれ。 
1986年 南京師範大学文学学士。
1989年 南京大学文学修士。
~92年 南京師範大学中文学部で教鞭。
1999年 スイスのヌーシャテル大学神学修士。
2000年 丁光訓と陳沢民より按手、
                  南京金陵神学院に招聘。
02年~     同神学院副院長。
03
~08年 スイスのバーゼル大学で博士課程、
       学位取得。ヌーシャテルからも名誉博士号
     (アナン元国連事務総長と同時)。
       アメリカ、スイス、台湾、シンガポール、
       フィンランドなど世界各国で講演。

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