東京自殺防止センターが講演会 「魂の苦痛」に医療では限界 2012年2月18日

 東京自殺防止センター(内山彪理事長)は1月7日、「〝うつ〟とのつきあい方」と題する講演会をルーテル市ヶ谷センター(東京都新宿区)で開催した=写真。講師は『家族力がうつから救う』などの著書である山口律子氏(NPO法人うつ・気分障害協会顧問アドバイザー)。

 死にたいほどの気持ちを抱えた人とどうかかわっていくか――。自殺者数が14年連続で3万人を超え、うつ病の通院患者数も急増するなか、厚労省も「こころの耳」などのホームページを設け、対策を打ち出している。

 山口氏は、うつ・躁うつ病をタイプ別に分け、その状態にある人への理解の仕方、回復のための支援、自殺を防ぐために知っておくべきことを解説した。うつ病は誰でも罹患する可能性がある。早期発見、早期治療をしないと「心の肺炎にもなりうる」と、山口氏。自殺はうつ病患者の15%にみられることを考えると、「心の風邪」と侮れない。

 15人に1人がうつ病、とされる時代。罹患する割合は女性に多いが、自殺は圧倒的に男性に多い。女性は相談できる友人や、姉妹、母親などのネットワークをもっている人が多いが、男性でカウンセリングなどの相談機関を訪れる人は少ないという。山口氏はそうした機関に男性がかかりやすい環境を整えることも大切、と話す。

 企業でのメンタルヘルスにあたっている山口氏は、睡眠時間とメンタルヘルス不全の関係性にも言及した。4時間以下の睡眠が20週間続くと、80%の率でうつ病などのメンタルヘルス不全を起こしてしまう。会社員だけではなく、受験生にもあり得るという。

 身体の苦痛や心の苦痛など、死にたい気持ちをもつ理由はさまざまあるが、なかには「魂の苦痛」を訴える人もいる。「魂自体が苦しいと訴えるケースの場合、これは医療だけでは無理。こうなってくると宗教の世界になる」と山口氏は言う。

 死にたい人、死に行く人のケアにとって重要なのは「寄り添うこと」であり、十分なケアを施した上でも苦しみが取れないのなら、「辛いかもしれないが、心配している」という寄り添う姿勢が大切だと主張した。

 自殺を打ち明けられたときの対応策として、「沈黙の時間にも耐え、傾聴」「相手の立場を尊重するべき」と山口氏は述べた。また決して行ってはならないことは、「話を遮ったり、逸らしたりする」「忙しいと伝える」「質問攻め」なのだという。

 東京自殺防止センターは、自殺を考えている人々や苦悩する人々に感情面での支えを提供することを目的としたボランティア団体。訓練を受けたボランティアによる電話相談を夜8時から翌朝6時まで年中無休で受け付けている。

 東京自殺防止センターは、1953年に英国人牧師のチャド・ヴァラー氏が始めた相談機関である「国際ビフレンダーズ」に加盟する。国際ビフレンダーズは、活動の基準として、「国際ビフレンダーズ憲章」をもち、「ビフレンディング」(Befriending=友となる、味方になる)によって、人々を支援している。自殺予防のために、全世界で3万1千人のボランティアが40以上の国でこの憲章に基づき活動している。

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