初の「宗教文化士」に58人 関学など8大学が認定制度で連携 2012年2月18日

 日本宗教学会と「宗教と社会」学会を母体として設立した宗教文化教育推進センター(CERC、土屋博センター長)は昨年12月、全国6カ所(北海道大学、東北大学、関西学院大学、天理大学、國學院大學、皇學館大学)で初めて実施された「宗教文化士」認定試験の結果を公開した。11月13日に実施された第1回の受験者数は91人で、うち58人が合格した(合格率63%)。資格の有効期間は5年間。

      

「正しい宗教知識」教えられる人材を

 宗教文化士は、「日本や世界の宗教の歴史と現状について、専門の教員から学んで視野を広げ、宗教への理解を深めた人に対して与えられる資格」として同センターが実施する認定制度で、「主な宗教の歴史的展開や教え・実践法の特徴、文化と宗教の関わり、現代社会における宗教の役割や機能といったことについて、社会の中で活かせる知識を養っている」ことが求められており、特定の宗教の批判あるいは布教の手段に用いてはならない、とする倫理規定も設けている。宗教の歴史や現状を正しく把握し、それを広く伝えることのできる人材を育成する制度として立ち上げられたもの。

 受験資格は、原則として大学3年生以上(大学院生含む)で、大学において三つの到達目標「教えや儀礼、神話を含む 宗教文化の意味について理解ができる」「キリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教、仏教、神道などの宗教伝統の基本的な事実について、一定の知識を得ることができる」「現代人が直面する 諸問題における宗教の役割について、公共の場で通用する見方ができる」に対応した科目を履修し、合計16単位以上を取得していることが必要(すでに12単位取得していれば、残りの単位を履修中でも受験可)。大学を卒業・修了していても、原則として卒業・修了後2年以内であれば受験でき、現職の中学や高校の教員も受験できる(社会科関連、宗教科などの関連分野で5年以上の教育歴があることが必要)。

 関西学院大学神学部のほか、皇學館大学、國學院大學、大正大学、筑波大学、天理大学、東北大学、北海道大学に担当教員を置き、連携を図る。

 認定試験は「記号選択式」問題が50問、「論述式」問題が1問。両者で基準に達したものが合格となる。次回の試験は6月24日に予定されており、今後は年2回ずつ実施される。

 関係者は、「資格取得が直ちに就職につながるわけではないが、商社や観光業、学校の現場などで宗教知識がますます求められるであろうと予測され、今後重要な資格になる」と期待を寄せている。

イラスト=「宗教文化士」認定プロセス(関西学院大学サイトより)

 

◇ 第1回認定試験問題(抜粋)◇

 

【記号選択式】

 問① 現代世界のキリスト教に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。▼ア「ヨーロッパには、プロテスタントに含められる教派を国教と定めている国が複数ある」▼イ「カトリックでもプロテスタントの各教派でも、マリアは『神の母』として、崇拝の対象になっている」▼ウ「カトリック教会に属する教会では、世界中どこでもミサにはラテン語が使用されている」▼エ「カトリックとプロテスタントの信者数を合わせても、ムスリムの数に及ばない」▼オ「キリスト教において、クリスマスとともに重要な祭として復活祭がある」
 問② 現在の世界各地のキリスト教の信者分布に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。▼ア「韓国におけるキリスト教徒は、カトリックとプロテスタントを合わせ、全人口の2~3割程度である」▼イ「現代中国においては、キリスト教会の活動は認められていないので、キリスト教の信者はいない」▼ウ「中近東はイスラーム圏であり、とくにアラビア半島に位置する国にはキリスト教徒は存在しない」▼エ「インドにおけるキリスト教徒の人口は、ムスリムより少ない」▼オ「アメリカ合衆国のキリスト教徒の大半はカトリック教徒である」
 問③ 世界各地のキリスト教会に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。▼ア「アフリカ諸国には、宗教人口においてキリスト教の信者が多数派を占める国家はない」▼イ「北欧では、プロテスタント教会が伝統的にもっとも強い影響力を持っている」▼ウ「南米は社会主義政権が多く、全体としてカトリック教会の影響力は極めて弱い」▼エ「中国にはじめてキリスト教が伝えられたのは、日本にはじめて伝えられたときよりもずっと早い」▼オ「ロシア正教会は、共産主義政権下でも人びとの支持があったため、自由な活動が許され、活発な布教を行っていた」
 問④ 現代日本のキリスト教に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。▼ア「現在日本にあるプロテスタント教派の本格的な活動は明治以降である」▼イ「日本におけるキリスト教徒は戦後しだいに増え、現在では全人口の1割近くに達している」▼ウ「東京の神田にある有名な東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)は、幕末にロシアからやって来たニコライにちなむ教会で、ロシア正教に属する」▼エ「日本人でカトリックの修道女になる人はいるが、プロテスタントの牧師になった女性はいない」▼オ「日本にあるキリスト教系の学校の数は、カトリック系とプロテスタント系を合わせても仏教系の学校の数に及ばない」

 ※解答=①ア・オ/②ア・エ/③イ・エ/④ア・ウ

【論述式】

 次の5人が現代日本の宗教教育について話し合っている。どの人の話が共感をもてるか、あるいは説得的と感じるかを
明確にしたうえで、そのテーマに関する自分の意見を、600字以上800字程度で述べなさい。
 ▼A「宗教のことを中学校や高校で教えるのは難しいから、積極的に考えなくていい。宗教のことは自分の考えがしっかりしてから学んだ方がいい。大学ならいいかもしれない」▼B「教科書には宗教に関することが書いてあるよ。歴史や地理の教科書にも倫理の教科書にも書いてある。だから、もう十分学んでいるから、今のままであまり問題はないと思う」▼C「それは言葉だけ教わっているんで、あんまり実際の理解になっていないんじゃないか。高校くらいだったら、お坊さんとか、牧師さんとか、神主さんとかを教室に招いて、そうした人の話を聞くような機会があってもいいんじゃないかな」▼D「宗教家を招くのはどうかと思うけど、日本にもいろんな国の人が来るようになったから、中学や高校では実際の生活に結び付いた宗教について、もっと学ぶ機会を増やした方がいいと思うよ」▼E「私は、むしろアブナイと言われているような宗教について、しっかりと教えた方がいいと思う。専門家を呼んだりして、どんな宗教に注意したらいいのか、意見を聞く機会が必要だと思う」

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