〝神の手〟として人のために 上智大・聖母大 新キャンパスで看護教育 2012年3月10日

総務担当理事 山岡三治教授に聞く

 上智大は、2010年から建築工事を進めていた目白聖母キャンパス一号館(東京都新宿区)=写真=を完成させた。1月11日、竣工祝別式を行った。上智大と、カトリック系で看護師を養成する聖母大は、共通理念であるカトリシズムの精神で、昨年4月に法人合併し、新しい看護教育に取り組んでいる。新キャンパスでは上智大の総合人間科学部看護学科の新2年生と聖母大の新3・4年生が学ぶ予定。上智大がめざす看護教育について、総務担当理事の山岡三治教授に聞いた。

――昨年、看護学科を新設したことについて。
 
 ずいぶん前から話はあった。上智大の中には、総合人間科学部がある。以前、文学部が11学科で構成されていたが、そのうち4学科(教育、心理、社会、社会福祉)が独立して、総合人間科学部に。「人間の尊厳」を取り扱う学部として誕生させた。

 思想的な面が強い文学部に対して、総合人間科学部を構成する学科は比較的実践的な面が強い。そこにさらに「人のために」ということを考えると、看護学科は最適だった。以前からほしいと考えてきた。

 上智大には医学部も薬学部もないが、上智らしいものを打ち出したい。人文や人間教育に伝統があり、教師たちもそろっている。そういう教育をきちんと受けて、将来の看護士を要請する、と。 

 看護学生は病院実習もあるわけで、むしろ医学の先生たちから独立した社会的立場が必要になってきている。例えば、老人看護の分野は、医師よりも、人と対話のできる、教養ある看護士を増やしていくことのほうが日本の将来のためにも重要。厚生労働省もこれについては評価してくれている。

――相当前から着眼を?
 
 ずいぶん前から「医学部をつくるべきか」などの議論はあったが、財務的にも難しい。上智大らしい教育理念は、「他者のために」というのがある。それを実践する具体的な学科があってもいいだろうということで、受け入れやすい分野だ。

――イエズス会の上智と、聖母はマリアの宣教者フランシスコ修道会。修道会のカラーの差異は?
 
 カトリックだから基本は同じ。精神としては大きな一つの器に入っている。教育理念では異なる表現があるが、実際は兄弟のように接している。カトリックは、どこにいても結局、ピラミッド的なヒエラルキーの世界なので、そういった強さはある。どこの修道会にいても、教皇がどこにでも動かせるし、プロテスタントとは違う。うまく動くなら、良い働きになる。カトリックも悪い面が出たら、権力が動いてしまうこともある。

 世界同一基準で司祭になっているわけで、シスターと同じような助け方をできる。シスターたちが運営している学校がたくさんあるが、上智としても協力しやすい。助け合いや信頼といった面では、他の学校とは違うと思う。

 

――看護学科の定員は70人。今も受験の只中です。受験者の応募状況について教えてください。

 1年目は、700人以上の応募。今年も10倍近い倍率。慶應や聖路加、北里など看護学科をもつ私大がある中で、上智で看護を勉強したいと思う人がいるのはありがたいこと。

 (看護学科の)1年生が四谷で勉強するとことは、わたしの視点ではありがたい。というのは、最近は「大学を出ても将来なにをしていいか、わからない」人が多いから。課外活動をしたり、いろいろと模索するが「わからない」と。しかしここに入学する1年生は、「自分は他者のために」と、初めから決まっている。わたしはそういう人を欲しかった。他の学部生は、「自分のために何をしようか」ということを一生懸命考えているところで、すごく良い刺激になると思う。自分のために考えることも、自己実現の視点では大切なこと。しかし看護に入学してくる学生たちは、同じ18歳でも、人のために具体的に奉仕するために準備を始めるわけだから。ただ、人生模索している人が9割、のところで逆に影響されると困るな、とも思う。

――上智大ならではの看護教育について教えてください。

 キリスト教系の看護大、有名私大の看護学部はいろいろある。上智ならでは、と言うのなら、教育理念だ。キリスト教ヒューマニズム、といったところ。単なる知識や技術を追求するのではなくて、一人ひとりのケアを全人格的に取りくみ、人間全体として扱っていくこと。ケアという言葉は、元々はキリスト教のもの。一人ひとりを大事にしていくことは、中世よりも以前から、ラテン語としてもあった。それを重視し、実践、意識させることは他大学ではできないことだと思う。

 看護は、人のいのち、その後のことについても患者と一緒に取りくむことだから、宗教的バックグラウンドをもつ人は、それなりの特徴を出すことができる。信者にするとかそういうことではなくて、神によって愛されている一人ひとりを、神の手になって助けていく使命感を持って働く人がどんどん現れていったら良いと思う。

 (初年度で)200万を超える学費を払ってくれるのは、親も大変なことだと思う。理工学部よりも高い。それだけやる気になってくれているのは、すごいことだ。(聞き手・竹下香澄)

特集一覧ページへ

特集の最新記事一覧

TO TOP