「自死」を教会の問題として 関西学院大 神学セミナー 2012年3月17日

 関西学院大学神学部(水野隆一学部長)は2月16、17日の両日、同大(兵庫県西宮市)で第46回神学セミナーを開催した。自死者が年間3万人を超えるという現状を、教会の問題として捉えられているだろうかとの問いから、テーマには「自死と教会」が掲げられた。教会内外から約130人が参加した。

 セミナーは新潟いのちの電話前理事長である眞壁伍郎氏(新潟大学名誉教授)の主題講演からスタート。同氏は「いのちの危機にどう応えるのか――わたしたちに問われていること」と題し、いのちの電話での働きに基づいて、データを用いながら客観的に、またさまざまな著作からの引用をもって幅広い視野から自死の現実について語られた。教会が向き合わなければならない問題の本質について、「多くの人々が疲れ果てている。しかし教会の門は開けてもらえない」と指摘した。

 「自死・自殺は罪なのか――ジョン・ダン『自殺論』の問いかけるもの」と題して講演した土井健司氏(関西学院大学教授)は、英国国教会の聖職者ジョン・ダンの『自殺論』から、自死を自殺、自己殺害として禁止してきたキリスト教の伝統に疑問を投げかけた。

 続いて参加者は二つのグループに分かれ、自死に対する実践的なアプローチについて学びを深めた。中道基夫氏(同大准教授)は「自死で亡くなられた方の葬儀」とのテーマで講演し、榎本てる子氏(同大准教授)は「もし『死にたい』と言われたら、あなたは……」とのテーマで参加型のワークショップを行った。

 2日目は、井出浩氏(同大教授)が「自死とは――精神医学の視点から」と題して講演。精神医学の立場から自死予防、自死理解について語り、「自死は突発的に起こらず、必ず前触れがある」と強調した。

 全体協議では、これまでの講演を振り返ると共に、牧会の現場で直面した経験が共有された。

 神学セミナーでは毎回、その回のテーマを取り入れた閉会礼拝が行われており、今回はワークショップの参加者から出た「傷み」についての言葉が礼拝式文の中に取り入れられた。

 中道氏は、「2日のセミナーですべてを語ることはできなかったが、教会の中で自死の問題を語り始める一つのきっかけになったのではないだろうか」と振り返った。セミナーの内容は、キリスト新聞社から『神学部ブックレット』として出版される予定。

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