イスラームとの対話にも注力 NCC/カトリック対話集会で司祭ら 2012年3月17日

 年に一度、相互理解と交流のしるしとして行われている日本キリスト教協議会(NCC)/カトリック対話集会。今回はカトリック側の主催により、2月28日、「カトリック教会の諸宗教対話の手引き――実践Q&A」をテーマにカトリック麹町聖イグナチオ教会(東京都千代田区)で開催された。

 『カトリック教会の諸宗教対話の手引き――実践Q&A』(以下、『手引き』)は、2009年にカトリック司教協議会諸宗教部門が発行したもの。同書の編集にたずさわった、同部門顧問であるフランコ・ソットコルノラ(聖ザベリオ宣教会)、園田善昭(コンベンツアル聖フランシスコ修道会)両司祭がそれぞれ発表した。

 『手引き』の第一部「諸宗教対話の心」について発表したソットコルノラ氏は、カトリック教会の諸宗教に対する態度、諸宗教間の対話についての基本的指針を解説した。

 1964年、教皇パウロ6世は教皇庁に諸宗教事務局を創立した(1988年、現在の「諸宗教対話評議会」に改組)。第二バチカン公会議は65年に『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』(ノストラ・アエターテ)を公表。

 国内では、司教協議会諸宗教部門が2006年に『諸宗教対話 公文書資料と解説』を刊行。そして『手引き』が生まれた。『手引き』は10年に英訳も発行し、いまは日系人向けにポルトガル語で準備中である。

 「対話の本質は互いに自分の信仰を表して証するところ。基本的に福音宣教の場でもある」とソットコルノラ氏。「共通点があるから……ではなくて、異なる点があるのに対話をする」ことが重要であると述べた。

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 園田氏は、『手引き』の第二部「諸宗教対話の実践Q&A」について発表した。これは合計88のQ&Aで成り立っている。内容は、教皇庁福音宣教省・諸宗教対話評議会の指針『対話と宣言』(91年)が示す4形態に従い、日常生活の中での対話(Q1~43)、行動による対話(Q44~59)、教理の相互理解による対話(Q60~66)、宗教体験による対話(Q67~78)に大別。また補遺として「イスラームについて」正しく理解するために10の問いも設けた。

 園田氏は「対話」に関連して、他宗教の儀式に参加する姿勢についての考えを示した。受動的な参列(respectful presense)と積極的な参加(participation)、厳密には区別されていないものの、信仰上の問題としての言葉の定義について触れた。「わたしたちは寺社へ行くことを、respectful presenseと考えているが、カトリック信徒が聖公会での日曜礼拝に出席するとしたら、participationがふさわしいだろう」と園田氏は言う。

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 質疑では、日本聖書協会の渡部信総主事が、「イスラームとの対話について、カトリックはどう考えているか」と質問。これに対しソットコルノラ氏は、カトリックが現在最も力を入れているのがイスラームとの対話であるとし、両者間で対話が進んでいるのは米国とドイツであることを明言。

 「近年のカトリックのイスラームに対するアプローチは、神学や教理を取り上げることではなくて、人権や、社会の中でより良い市民として生きるにはどうすれば良いか、というようなレベルでの対話だ」と答えた。

 NCCの輿石勇議長は本紙の取材に対し、「積極的に他宗教との対話に従事している神父の働きに敬服した。具体的な経験から数々の示唆を受けた」「ホロコーストやパレスチナ問題など、歴史的な出来事への深い反省から始まった他宗教との対話に基づく世界の平和が、一日も早く実現することを心から祈る」と感想を述べた。

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 NCC/カトリック対話集会は、1981年に教皇ヨハネ・パウロ二世が来日したことをきっかけとして開かれた両者の懇談会(同年6月12日)に端を発する。懇談会の目的として、エキュメニズム委員会委員長の伊藤庄治郎司教が「教皇来日の際、『エキュメニカルの集い』にNCC側のある一部の方のご臨席を頂けなかったことを残念に思うと同時にもっとつっこんだ会話をもち、相互理解を深めたい」との趣旨を述べていた。

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