新作能「ルター」(試作)を京都で 伝統文化で宗教改革表現 2012年3月17日

 新作能「ルター」の試作に取り組んでいる上村敏文氏(ルーテル学院大学准教授)は、2回目となる試演を2月17日、京都市の国際日本文化研究センターで行った。能楽師の上田公威氏(シテ方観世流)がルターを、上田拓司氏(同)がローマからの使者を演じ、会場は500人の観客で満席となった。同作は、宗教改革から500年目にあたる2017年の完成を目指して上村氏が07年から制作しているもの。

 10年に日本福音ルーテル稔台教会(千葉県松戸市)の宗教改革主日礼拝の中で行われた試演では、試作段階の抜粋を「複式夢幻能」という形式で上村氏が自演した。2回目となる今回は、若い頃のルターの風貌に似ているとの理由から、能楽師の上田氏にルター役を依頼。上田氏は重要無形文化財総合指定保持者で、日本だけでなく、フランス、東欧、オーストラリア、インド、中国などでも活躍している。

 上村氏によると、稔台教会の試演では後場にルターの95ヶ条の論題に関するクライマックスを持って来たのに対し、今回はエキュメニカルな宗教間対話を意識し、前半に宗教改革を持っていき、後半は神使の顕現により、両者の対話、そしてルーテル世界連盟とカトリック教会が1999年10月31日に調印した「義認の教理に関する共同宣言」を言祝(ことほ)ぐことに主眼を置いた。

 試演を終えた上村氏は、「聖句(文語訳)、讃美歌を中心に構成したが、能楽の謡がこれほど見事に適合するのは想像以上。特にルター作詞作曲の教会讃美歌450番は、地謡と舞が力強く、違和感どころか、能楽を初めて鑑賞した人にとっても感動する出来映えであった」と感想を述べた。

 会場となった国際日本文化研究センターでは、04年から「伝統文化芸術総合研究プロジェクト」(笠谷和比古プロジェクト長)を開始し、日本の文化伝統を基底にした新たな文化・芸術的形象を世界に向けて発信し、世界のグローバルな文化形成に貢献・寄与していくことを掲げている。同所で試演したことについて上村氏は、「能楽という日本の伝統文化により、ルターの宗教改革を表現する、すなわち、キリスト教の日本風土への一つの表現形態としての試みを行なった」と語る。

 上村氏が能に関心を持つようになったのは学生時代のこと。偶然通りかかった東京・表参道の能楽堂で「自然居士(じねんこじ)」という曲を見て、人間国宝・亀井忠雄氏の鼓に衝撃を受けた。「一生かけて学ぶ価値のある芸術だ」と思い、能楽師の若松健史氏に師事。それまで大学で社会工学を学んでいた上村氏であったが、稽古を受けると同時に能の理論も学ぼうと、筑波大学大学院で日本研究を行った。88年にイエズス会司祭の門脇佳吉氏(上智大学名誉教授)が新作能「イエズスの洗礼」をバチカンで公演したことに啓発され、自身でも新作能の制作に携わるようになった。

 2017年の「ルター」完成に向けて上村氏は、「教会や、ホールなどでいろいろな形態で出来るように、また一般の方が『自分でもやってみたい』『謡ってみたい』『舞ってみたい』と思えるように、そして一過性ではなく、世阿弥の言う「衆人愛敬」(しゅうじんあいぎょう)、すなわち目利きにも、そうでない人々にもみなに親しまれ、繰り返し能舞台でも演能されるように、愛される曲目になれば」と、期待を込めている。

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