相談室「クリニック絆」開設 斎藤友紀雄氏 〝宗教に自殺を防ぐ力ある〟 2012年3月24日

 1985年に、東京いのちの電話関係者によって創設された特例民法法人青少年健康センター(斎藤友紀雄会長)、医療法人社団北の丸会北の丸クリニック(倉本英彦院長)、有限会社北の丸カウンセリングセンター(関川俊男社長)の3団体は3月1日、自殺予防を主な目的とした相談室「クリニック絆」を開設した。

 同相談室は、電話相談と面接を結び付けたもの。一般相談電話では、所定の訓練を受けた相談員が対応する。精神科医・臨床心理士などの専門家による電話相談は、一般電話相談で予約の上、電話番号を通知。面接相談を希望する場合は、郵送かメールで所在地を連絡する。電話相談は無料だが、面接は有料となる。

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 「クリニック絆」という名称は、青少年健康センターの創立者で、東京いのちの電話の理事・面接室長を務めた精神医学者の稲村博氏による著書『心の絆療法』(誠信書房)に基づいている。稲村氏はかつて、「電話で心の絆ができると、信頼して面接に出てくる。二つを結び付けることが自殺を予防することにつながる」との考えから電話と面接を結び付けた相談を行っていた。ところが稲村氏が亡くなり、東京都からの助成金が断たれたため、9年前に終了。これを「残念だ」とする斎藤氏の記事がジャパンタイムズに掲載され、記事を目にしたドイツ人の篤志家が昨年の暮れに資金を援助。急きょ準備を進め、3月から相談室を立ち上げることになった。

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 斉藤氏は現在、日本いのちの電話連盟理事、日本自殺予防学会理事長なども務めている。30年以上自殺問題に取り組んできた。稲村氏のライフワークであった「心の絆」については、いのちの電話で生み出した精神療法だと述べる。そこには「生きる意味を一緒に考えていく」「丁寧に忍耐強く」といった、無教会のキリスト者であった稲村氏の精神が込められているという。重要なことは、面接時に次回の約束をすること。「次に会うまでは死なない」という拘束力を持つからで、そこで生まれる信頼関係も一つの絆となる。「最初は電話相談で電話線一本。次に会った時には医者との心の絆。その間、本人を取り巻く家族関係、友人関係、職場の関係を調整していく。線だけでなく面として本人をサポートする」

 相談室が置かれている青少年健康センターでは、ひきこもり問題に取り組み、電話相談だけでなく、自立支援のためのデイケア活動を行っている。北の丸クリニックは、摂食障害やパニック症候群など病理的な思春期問題を抱えている若者のための外来精神科クリニック。北の丸カウンセリングセンターは、EAP(従業員支援プログラム)として、主に電話相談によって企業等組織に働く従業員やその家族を支援している。

 自殺は精神医療だけでは防げないと指摘する斎藤氏。「うつ病を治しても『死にたい気持ち』までは治らない。医療では治せないもの。本人が生きるあてを持っているかどうかというスピリチュアルな問題」と述べる。同氏によると、自殺率が低い欧米では、たとえば米ハーバード大学の精神医学教授であったキャプランなどが、宗教の自殺抑止力を科学的根拠として示している。「信仰や宗教そのものが自殺を防ぐ大きな力を持っている。宗教の持つ役割を認識しなければいけない」

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 「クリニック絆」の一般電話相談(℡03・5319・1760)の受付時間は、月~金曜日の午後1時~6時。専門家による電話相談および面接相談は土曜日の午後1時~6時の予約となる。

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