映画「アンネの追憶」 2012年4月21日

 世界で最も有名な日記の著者、アンネ・フランクの伝記映画である。

 本作は、未完で終わっている日記に書かれなかったその後を、フランク一家でただ一人生き残った父オットー・フランクによる回想として描く。アンネ自身の日記の中身には触れていない。  

 時代の暗雲が日に日に影を落としていくなか、アンネは家族とともに用意してあった隠れ家へ移るが、ゲシュタポに踏み込まれ、連行されてしまう。  

 本作が本格的に始まるのはここからだ。収容所送りにされる人々がぎゅうぎゅうに列車に詰め込まれる。ラビの先生はそんな場であっても神を語る。  

 収容所に到着しての選別、そして身ぐるみはがされてシャワーを浴びせられ、長い髪の毛が切り落とされてしまう女性たち。ユダヤ人たちがかわいそうというよりも、それを行うSSたちに、全く、良心のかけらも見えないことのほうが強烈。

 アンネは劣悪な環境に置かれてもなお、えんぴつと紙が欲しいのだと自分の大切なパンを差し出して、必死に乞う。書くことがすなわち生きることと同義であったアンネにとって、ものを書けないことは何より辛く、だからこそ、苦労して手に入れた筆記具を取り上げられてしまう場面は、切なく、痛々しい。

 監督のアルベルト・ネグリンは、ファシズム時代にイタリアを離れた両親のもとにカサブランカで生まれた。本作の冒頭で、「想像する悪はなぜ行われたのか?」「神の存在とは何か?」と問いかけるシーンがある。人間の本性、悪と神の存在は矛盾しないか、悪はなぜ存在するか、アンネが実際に日記に書き綴っていた疑問は、本作において収容所でのSSとラビのやりとりで表現されているようにも思う。(た)

有楽町スバル座ほか全国でロードショー

 

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