袴田事件 DNA型〝不一致〟「今こそ司法の正義実現を」 2012年4月28日

 静岡県清水市(現静岡市清水区)で1966年、一家四人が殺害された「袴田事件」の第2次再審請求。死刑囚・袴田巌さん(76歳)のDNA型と、有罪の証拠となったシャツに付着し、袴田さんのものとされた血痕のDNA型が一致するかどうか調べていた検察側推薦の鑑定人は4月16日、「完全に一致するものは認められなかった」との鑑定結果を出した。

 13日には弁護側推薦の鑑定人による鑑定結果が出され、血痕と本人の血のDNA型は「不一致」としており、2つの鑑定は矛盾しない結果に。
 今回、両者の鑑定が不一致になったことで、再審開始決定に向け、弁護側に有利な内容といえそうだ。

 袴田さんに対し、世界的規模で支援を展開するアムネスティ日本は16日、静岡地方裁判所に対し、直ちに再審開始を決定するよう要請。同時に、静岡地方検察庁に対し、新たな証拠にもとづく再審開始の手続きを、即時抗告などによって妨げないように強く求める、としている。

 アムネスティ日本は、DNA型の鑑定結果が出された衣類は、死刑判決の有罪認定を基礎付けた証拠であり、鑑定結果は、この証拠に証拠能力、証拠力がないことを明らかにするもので、さらには袴田さんの無罪を基礎づける新規の証拠であると言えるため、再審請求の理由が認められる、としている。

 国内では死刑確定事件で再審が開始され無罪が言い渡されたのは、80年代の4つの事件に留まり、それ以降は現在に至るまで、1件もなされていない。そうした背景には、「検察が原判決の有罪判断の維持に固執することにより、再審の実現を難しくしている事情がある。しかしながら、当初から袴田事件は、その取調べ過程における不公正な手続きが問題となってきた。検察庁は、袴田事件における究極的な不正義に真摯に向き合い、今こそ司法の正義を実現すべきである」と強調している。

 袴田さんは、死刑が確定した後、84年のクリスマスイブに、教誨師志村辰弥神父より洗礼を受け、霊名をパウロと名づけられた。洗礼を受けた日のことを、《この時こそ正に私にとって新鮮な歴史が開花する瞬間であった。いや、歴史だけではない、キリストの福音にあって勝利と誉れを歌いあげる天上の予感であった》などと手紙に書いていた(『主よ、いつまでですか』新教出版社)。

 実姉の秀子さんによると、死刑囚へ差し入れなど支援を行う「愛の招きの会」の修道女と巌さんが文通による交流で、志村神父と知り合い、受洗を決意したという。こうした経緯があるため、これまでもカトリックの司教らが再審の署名集めに尽力してきた。

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