青山学院大学神学科同窓会基督教学会が初のシンポ 今日における伝道者養成 2012年5月26日

 青山学院大学神学科同窓会基督教学会(関田寛雄会長)は、「今日における伝道者養成の課題をめぐって」と題する公開シンポジウムを4月30日、同大学(東京都渋谷区)で開催した。牧野信次(農村伝道神学校講師)、神田健次(関西学院大学神学部教授)、塚本惠(大阪キリスト教短期大学教授)、広谷和文(聖公会神学院校長)、鈴木脩平(日本聖書神学校教授)、黒木安信(ウェスレアン・ホーリネス神学院院長=文書参加)、坂本誠(日本ナザレン神学校校長=文書参加)の各氏が発題し、会員ら約40人が出席した。

「神学校間の共同研修を」

 日基教団上星川教会牧師である牧野氏は、73年に町田市鶴川で開拓伝道を始めると同時に、農村伝道神学校の旧約学講師に就任した。同神学校の神学教育のビジョンとして、①「農」にかかわる(こだわる)、②戦争責任を担う、③いのちと共生に向き合う、という3点を指摘。教会の現場からの意見として、「教会という『場』にあって、絶えず『教会とは何か』また『牧師とは何か』を自明のこととせず問い求めてきた。今はただ『霊(現臨)のキリスト』に『信』をおいて、与えられた場で伝道牧会に励むしかない」と述べた。

 83年から関西学院大学神学部で教鞭をとる神田氏は、今年新制大学神学部開設60周年を迎えた同学部を紹介。現在158人(院生含む)の学生が在籍する同学部では、04年からコース制を導入し、「キリスト教神学・伝道者コース」と「キリスト教思想・文化コース」を開設した。学部の「今日の教会」という講義や、大学院の教会実習・臨床牧会実習などを通して、フィールド教育を重視しており、毎年5~10人の伝道者を輩出している。課題として神田氏は、「一つの神学校だけでなく、神学校間の共同研修が必要」と述べるとともに、若手教職をサポートするための生涯学習の必要性を強調した。

 塚本氏は、大阪キリスト教短期大学の神学教師の立場から発言。同校は、日本フリーメソジスト教団認可の神学校でもあり、設立当初から福音主義神学校として牧師養成を行ってきた。52年以来存続していた神学科は09年度に廃科となり、現在は国際教養学科の中に、神学基礎コースとキリスト教文化コースとして存続。その上に専攻科神学専攻が設置されている。塚本氏は、同教団からの入学希望者が激減していることを挙げ、「教団認可の神学校であることを早晩中止する事態となるであろう」と指摘。経済的に専任教員の補充が困難であることを示し、「国際教養学科の教員の現状維持ができないのであれば、神学教育そのものが危うい」と語った。

「霊性の養いに心向けて」

 広谷氏は、昨年創立100年を迎えた聖公会神学院の歴史を振り返り、現在取り組んでいる四つの課題を提示。第一に、「神学校こそ、神学生一人ひとりが自らの召命を問い、その確認作業を行う場となるべきではないか」とし、そのための機会、場、プログラムを提供することを主張。第二に、神学校の修道院的な修練の場としての性格に注目し、「霊性」に出会い、気付き、開眼する機会を提供する場となることを提言。第三に、基礎的学力を身に付けた上で神学的思考に習熟し、豊かな対話力をもった牧会者、伝道者の育成に取り組むことを強調。第四に、必修の「教会実習」にとどまらず、社会的フィールドにおける実習を希望する学生が増えていることを評価した。その上でこれらの取り組みが、「ミッシオ・デイ」(神の宣教)の考え方に立って、それを現状を踏まえて再構成する作業であると主張した。

 鈴木氏は、イングランド出身の宣教師レスリー・ニュービギンに着目し、同氏が「宣教」を「キリストを伝える者も、伝えられる者も、共に造り変えられること」として強調している点に言及。伝道者であることの本質的なことだと述べた上で、台湾神学院で行われている霊性の養いの試み(聖書黙想訓練)を紹介し、「聖書黙想を通しての共同体作りや、霊性の深まりに、わたしたち神学校が心を向けなければならない」と主張。91年から開始した日本聖書神学校とフィリピン・シリマン大学神学部との交流プログラムを例に、「自分ではなくキリストに頼るということを実感として覚えるのが現場教育の一つの大きな目的」として、現場学習の充実を強調した。

 文書参加した黒木氏は、全寮制であるウェスレアン・ホーリネス神学院の生活を紹介し、「主の教会と信徒に仕えていく」ことは伝道者への主からの委託であると強調。同じく文書参加の坂本氏は、日本ナザレン神学校の震災への取り組みに言及。昨年10月にマニラで開かれたナザレン、アジア・太平洋地域宣教指導者カンファレンスに参加した神学生の感想を紹介した。

 青山学院大学文学部神学科は、1949年に基督教学科として発足。77年3月に廃科にされた。55年に発足した同学会は、学科の廃止後も、学院の建学の精神の徹底とキリスト教教育の発展のために貢献するとともに、学院創始以来の神学教育の伝統を回復するために活動を続けている。卒業生以外でも賛同者であれば会員になることができる。現在の会員は約300人。

 同学会が公開シンポジウムを開催するのは初めてで、東日本大震災から1年が経過し、日本社会の文化・文明が根本的に問われる時代にあって、宣教と教会形成についての問題を共有し、日本の神学教育に貢献したいとの願いから企画。来年は「キリスト教教育」をテーマに開催する予定。

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