鉄川与助がめざした教会建築 川上秀人氏「信徒の物語に思い馳せて」 2012年5月26日

 現在、「鉄川与助の教会建築展 五島列島を訪ねて」を開催中のLIXILギャラリー(東京都中央区)は、4月20日、川上秀人氏(近畿大学産業理工学部教授)を講師に招き、「棟梁建築家・鉄川与助がめざした教会建築」と題する講演会を行った。

 五島列島と長崎周辺の教会建設に生涯をささげた棟梁・鉄川与助(1879~1976)による教会建築の軌跡を追った同展。長崎は、全国に散らばる教会数の1割以上を占め、その数は130教会を超える。とりわけ、キリシタンの里と呼ばれる五島列島には約50の教会が点在する。

 鉄川与助の教会建築研究の第一人者である川上氏は、冷水教会や旧野首教会、青砂ヶ浦天主堂、桐原教会など、木造、煉瓦つくり、さまざまな教会を取り上げて解説、その魅力を話した。

 五島列島最東端の頭ヶ島に位置する頭ヶ島天主堂(1919年)は与助の唯一の石造の教会。着工から十数年かけて建てられた。非常に小さな集落の信徒がお金を出し合ったり、肉体労働して献身的な努力により完成させた。

 「教会が出来上がったときには、皆疲れ果て、財産を使い果たしたような情況で、信徒の中には、泣く泣くこの島を去らねばならなかったという悲しい物語が教会の石の中に刻まれている。もしみなさんが行かれたときには、一体誰のための教会だったんだろう、と少しでも思いを馳せてほしい」。

 研究のため教会堂の屋根裏にいると、近所の小学生たちが「マリアさま、いってきます、マリアさま、ただいま、という声が聞こえてくる。教会が生活の一部として溶け込んでいる」と川上氏。「信者ではない我々が、朝、仏壇に手を合わせていくのと同じような感じなのではないか」と話した。

 鉄川与助(1879~1976)は五島列島の中通島に、大工棟梁の鉄川与四郎の長男として生まれた。高等小学校卒業後、大工の修行中、教会の建設を手伝ったことをきっかけに、教会建築のとりことなった。与助が棟梁として設計、施工した教会は、戦前のものだけでもおよそ30棟。その半数が現存しており、4棟が国指定の重要文化財になっている。

 

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