日本聖書協会主催 国際聖書フォーラム2012 渡部信総主事インタビュー 2012年6月2日

 今年7月、「国際聖書フォーラム2012」が東京で開催される。2006、2007年と国内外の著名な聖書学者を集めて開催されたこのセミナーには、全2回で3800人が集まり、幅広い分野で聖書について学び、感謝された。このたび、5年ぶりに開催される国際聖書フォーラムについて、日本聖書協会(主催)の渡部信氏(総主事)に話を聞いた。

――今回のフォーラム開催は、現在進めている新しい聖書翻訳を見据えたものですか。またそうだとしますとプログラム、講師の方々は新翻訳との関係はありますか?

 現在進行中の新しい聖書翻訳事業との関係ですが、聖書フォーラムを開くことで、より多くの人に聖書に、そして進行中の新翻訳について関心を持っていただきたいと思っております。今回の海外講師の人選も、新翻訳の翻訳者の方々による推薦です。    

 ただし、新翻訳に直接つながるフォーラムではありません。このフォーラムはあくまで、国内外の聖書学の成果を、日本の多くの皆様にお伝えするものです。

――今回のセミナーは、どのような先生が来られるのですか。

 W.H.シュミット先生はドイツ旧約学をけん引するドイツ旧約学を代表する重鎮の1人です。刊行中のドイツ最大の注解シリーズ『旧約聖書注解』(ATD)の編纂者であり、『出エジプト記』の項の執筆者でもあります。現在、新シリーズの『エレミヤ書』下巻を執筆中です。『歴史における旧約聖書の信仰』、『旧約聖書入門』など、邦訳がいくつもあります。今回は、旧約と新約の関係をどうとらえるかを踏まえ、エレミヤ書研究の成果を話されます。

 L.グレイビー先生は古代イスラエル史の研究はもとより、後期ユダヤ教の分野でも卓越した業績を残していて、『キュロスからハドリアヌス帝に至るユダヤ教』という大著の著者です。一般的に、中間時代(旧約と新約の間の時代)に関してはまだまだ知られていませんが、今回は新約時代のユダヤ人の思想、信仰、生活の背景ともなった中間時代のユダヤ教に焦点が当てられています。当時のユダヤ教の理解を深めることで、新約聖書の理解に目が開かれることでしょう。

 P.ゲミュンデン先生は、タイセン先生(ドイツの新約学の大家)の下で勉強したかたです。1990年と2004年に来日して講演されている親日家で、新約学の分野で心理学的アプローチと図像学的なアプローチを開拓して注目されています。今回も、心理的なアプローチでローマの信徒への手紙とヨハネによる福音書を見ていくそうですが、今まで気付かなかった面に目が開かれるのではないでしょうか。

 田川建三先生は、代表的新約聖書学者の1人です。『イエスという男』など数多くの著書があり、宗教批判、『批判的主体の形成』に見られるような現代社会批判を展開してきたことでも有名です。特に現在は、『新約聖書・訳と註』という新約聖書の私訳と注解で注目されています。ここ数年は、一般公開の講演をされていませんが、聖書協会のために特別に講演を引き受けてくださいました。今回はヨハネによる福音書の研究成果をお話しいただきます。ヨハネによる福音書が史的事実を正確に伝えているという視点自体についても語られると思います。

――レセプションの講演は大貫隆先生ですね。

 大貫先生はご存じのとおり、著名な聖書学者で岩波版の翻訳者のお一人です。「遅れてくる了解‐死人たちには未来がある」というちょっと驚くような演題ですが、内容は終末における死者の復活というキリスト教信仰の本質に関わる問題が語られます。新約学者としての大貫先生の研究成果といえる講演ですので、多くの方に聞いていただきたいと思います。大貫先生の講演は限定60名参加。ディナー付きで、ジョン・チャヌさんによるヴァイオリン演奏も楽しんでいただけます。

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