国際教育フォーラム 世界新教育学会が自由学園と共催 子どもの自主性・創造性尊重 2012年6月16日

共に生きる社会を創る 

 「共に生きる社会を創る教育――オランダの共生教育と国内4校の実践事例から」をテーマとする国際教育フォーラムが6月2日、東京都東久留米市の自由学園(矢野恭弘学園長)で開催された。世界新教育学会(WEF日本支部・新井郁男会長)が同学園と共催したもので、教育関係者など約300人が出席した。

「差異どう乗り越えるか」

 リヒテルズ直子氏(日本イエナプラン教育協会代表)が基調講演を行い、両角憲二(和光中学・高等学校校長)、鬼沢真之(自由の森学園高等学校校長)、中村重郎(京田辺シュタイナー学校高等部教員)、高橋和也(自由学園男子部中・高等科部長)の4氏が各校の教育実践報告を行った。

 1996年からオランダに在住し、『オランダの共生教育』(平凡社)などの著書や講演を通して同国の社会事情やシチズンシップ(市民性)教育を日本に紹介しているリヒテルズ氏。あるカトリック学校を例に、私立校でも公立校でも子どもの頭数にしたがって国から同じ教育費が支給されることや、移民の子どもがいる学校にはハンディキャップを補うための費用がさらに追加されることなど、同国の教育制度について紹介した。

 世界保健機構(WHO)の調査では、オランダの子どもたちの「生活に対する満足度」は43カ国中トップ。「父母と何でも話せる」という比率も高く、反対に「学校の課題がプレッシャーに感じられる」という比率は低い。

 リヒテルズ氏は現地在住の経験から、「オランダの公教育に『共生教育』が浸透していることが、主観的な豊かさにつながっていると言える」と主張。60年代末から脱産業化社会への転換を図ったオランダとの対比から、世界市民を育てる脱産業化の共生社会へ向けた教育がこれからの日本には必要だと述べた。

 さらに、「和魂洋才」ではなく、すべての個人を尊重し、風土に適した技術や知識を育てる「洋魂和才」が必要だと述べた上で、「(世界市民を育てるために)日本がやらなければいけないのは、新教育運動の精神を公教育に広げるという努力。それをやる大人自身が、自分たちの間の差異をどう乗り越えるのか。これもわたしたちに示されている大きな課題ではないか」と提言した。

「システム批判する人間を」

 両角氏は「人間にとっての最大の不幸は戦争と差別」と述べ、それをなくすための「共に」学ぶ場を大切にする和光中高の特色を紹介。鬼沢氏は、自由の森学園では定期テストを行わず、レポートや作品に対して文章で評価していることを報告。

 中村氏はNPO法人である京田辺シュタイナー学校の特色として、教科書がないことを挙げ、生徒の作ったノートが教科書になることや、「卒業プロジェクト」の内容について報告。高橋氏は、中等科1年から高等科3年までの生徒たちが自治的に管理運営している寮生活を紹介し、「生活のすべてを教材にする」自由学園の教育を紹介した。

 更科幸一氏(自由学園)が司会を務めた公開討議では、日本の教育の問題点として、リヒテルズ氏が「入試」と「検定教科書」の2点を指摘し、新教育を公教育に広げることができない一番の障害だと語った。特に入試制度は、勝ち組と負け組の分極化をもたらすものとして見直しの必要性を主張。

 「教育は未来の社会を作ること。今の社会に不足しているもの、今の社会で間違っていることを変えなければいけない。そのためには、システムの中で批判する人間ではなく、システムそのものを批判する人間を育てなければいけない」と訴えた。

 子どもの自主性・創造性を尊重する「新教育」の普及を目的とするWEF(本部=ロンドン)は、1921年にNEF(新教育連盟)として設立された(66年にWEFに改称)。NEFの日本支部となる「新教育協会」は30年に、新教育実践家・思想家の野口援太郎を中心に、小林澄兄、小原國芳、羽仁もと子、稲富栄次郎らによって発足。自由学園の創立者でもある羽仁は、32年にフランスのニースで開催された第6回NEF国際会議と、35年に東京で開催された新教育協会主催「汎太平洋新教育会議」で講演を行っている。

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