「震災を語り継ぐ――希望の教育とは」 日本キリスト教教育学会大会フォーラム 2012年7月7日

 日本キリスト教教育学会(三浦正会長)は、6月15、16日の両日、第24回学会大会を桜美林大学(東京都町田市)で開催した。会員ら約70人が参加した。3・11以後、教会やキリスト教学校による復旧・復興に向けた支援活動の取り組みが報告される中、あらためて「震災を語り継ぐ」ことの意味を問い、キリスト教教育の課題として共有し、希望の教育を見出す道筋を考えようと、15日には「震災を語り継ぐ――希望の教育とは」をテーマとするフォーラムが行われた。

 フォーラムでは、荒井仁氏(日基教団鎌倉恩寵教会牧師・桜美林大学非常勤講師)が司会を務め、野田沢(学生キリスト教友愛会主事・日基教団震災担当幹事補佐)、松浦裕介(日基教団下ノ橋教会牧師)、嶋田律之(桜美林大学専任講師・大学チャプレン)の3氏が発題した。

 「震災におけるキリスト教教育の果たす役割――連帯・希望・再生」と題して発題した野田氏は、キリスト教主義学校の責務として、悔い改める責務、希望を語る責務、仕える責務、想起する責務を掲げた。教派を超えた連帯、教会と学校の連帯を訴え、その中で希望と再生を見出していかなければならないとし、そのための一つの教育的出来事として震災を捉えた。そして、直接ボランティアとして関わることができなくても、祈りの中でこの出来事に関わることができるとし、「すべてのキリスト教学校、幼稚園、キリスト教教育は、生徒、学生、幼稚園児たちに希望を伝えていくことができる」と語った。

 日基教団奥羽教区主事でもある松浦氏は、「東日本大震災支援活動に携わる中で『さあ、共に生きよう――日本基督教団奥羽教区第5期長期宣教基本方針の言葉から』」と題して発題。同教区が約5カ月にわたり続けてきた支援物資収集・配布に対して、大船渡市の商店から「教会が物資配布を続けると、商売を再開しようとしているこちらの迷惑になる」という趣旨の発言があったことを取り上げ、「時を経ていく中で地元商店の新しい歩み出しに影響を及ぼすことになるとは当初予想もしていなかった」と反省。被災者への支援とは、「表現し尽くすことのできない痛みと困難の中で生きようとしておられる方々の『いのち』に寄り添うこと」と述べ、被災や原発事故によって生活といのちが脅かされている人々を忘れず、「隣人」として共に生きることを強調した。

 「キリスト教主義学校におけるボランティアの考え方」と題して発題した嶋田氏は、昨年4月に日基教団東北教区センター「エマオ」に滞在した経験から、キリスト教主義学校における継続可能な震災からの復興・復旧支援への取り組みの考え方について考察。米国、韓国、日本で導入されている教育機関におけるボランティア活動教育プログラム(SL)と、ドイツのボランティア支援の考え方とを対比させ、キリスト教主義学校が持つボランティア活動のための教育指針には、リクルート型(SL制度)とともに、連帯・補完性の原理に基づくボランティアの考え方があると指摘した。後者については、ドイツのボランティア体制を支える原理だと紹介し、「連帯」を「絆」に言い換え、「この震災によって生まれた『絆』は、人情のつながりを復旧するのではなく、知り合い同士の絆を超えたもっと大きな絆。『隣人の絆』と言い換えられる」と主張した。

 参加者からは、「『希望の教育』と言った場合に何が希望なのか。復旧への見通しを立てるということが希望なのか。その線に沿って言うならば、復旧していく過程での人間の力や価値観の転換が希望でなくてはならない。これが本質的な問題ではないか」といった意見や、「今回のテーマが『震災』に限られているのは意図的なことか。自然災害は世界中で繰り返されており、ある意味で普遍的な問題だと思う。今回の問題は人災、つまり原子力発電所の問題。これをどうやって教育の力で突破していくかということをわたしたち自身の課題として受け止めなければならないのではないか」といった主張がなされた。

 16日には、「キリスト教学校の課題――教育同盟100年をふまえて」と題するシンポジウムが行われ、榑松かほる氏(桜美林大学教授)の司会のもと、大西晴樹(明治学院院長)、原誠(同志社大学神学部教授・キリスト教文化センター所長)、奥田和弘(元静岡英和学院大学学長・聖和大学名誉教授)、辻直人(北陸学院大学准教授)の4氏がそれぞれ、「教育同盟史の緯糸と経糸――エキュメニズムとナショナリズムの相克」「日本のキリスト教学校の原点と展開」「キリスト教教育と国家――大正期から昭和初期のキリスト教教育」「『キリスト教学校教育同盟百年史』の成果と課題」と題して発題した。

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