子どもの悲しみに寄り添うために 〝いのちをはぐくむ〟 東京・生と死を考える会セミナー 2012年8月11日 

 東京・生と死を考える会(加藤誠会長)は、「子どもの悲しみに寄り添うために――被災地の現場から そのとき、そしてこれから」を主題とした第11回夏期セミナー「いのちをはぐくむためのセミナー2012」を7月22日、グリーンパレス(東京都江戸川区)で開催した。会員など約40人が参加した。

       

「グリーフは自然な反応」岩本喜久子氏

 菊地理香子(仙台市立加茂小学校教諭・嘱託社会教育主事)、木村健弘(宮城県立気仙沼高等学校教諭)の両氏が被災地での体験を報告し、岩本喜久子氏(札幌医科大学寄付講座緩和医療学特任講師、元ダギーセンターファシリテーター=写真左)が講演、古田晴彦氏(関西学院高等部教諭=写真右)が模擬授業を行った。

 「親と死別した子どもへのかかわり――ダギーセンターに学ぶグリーフサポート」と題して講演した岩本氏は、現在ソーシャルワーカーとして患者・家族のためのがん・緩和ケア相談サロンを主宰している。全米で初めて設立されたグリーフサポート専門団体「ダギーセンター」に7年間従事した経験を持つ。同センターは、愛する人と死別した子どもや家族が安心して話せる場所を提供することを目的として1982年、米・ポートランドに設立された。

 岩本氏は「グリーフ(悲嘆)」を、「喪失によって引き起こされる心身の当たり前の反応」と定義し、子どもとグリーフの関係について同センターのマニュアルに基づき、「子どもであっても、大人であっても、大切な人を失った時に生じるグリーフはごく自然なもの」「ひとりひとり、本来自分を癒す潜在的な力が備わっている」「グリーフの長さや強さは人によって異なる」「他者を世話したり、他者を受け入れることは、癒しの過程では良いサポートになる」と解説。

 グリーフの役割として、「その人が亡くなったことを理解する」「死についての思いを感じ取る」「その人の死後も、亡くなった人への思いは生き続ける」という3点を指摘した。

 その上で、親や兄弟、友人との死別を経験した子どもの臨床例を紹介し、共通点として、子どもは子どもなりに考えを持っていること、人にグリーフを語ることの難しさを抱えていること、真実を知りたいと思っていることなどを指摘。ダギーセンターを例に、子どもたちが、集まってくる子どもたちを自分で見て、話を聴き、一緒に遊ぶことによって、「ひとりじゃない」ということを感じられる環境作りが大切だと述べた。

 最後に、死別を体験した子どもと関わる際は、子どもと同じ視線で話を聴く、話をすることが大切だとし、子どもの死別体験は時に急激な精神的成長をもたらすが、永久的なダメージを残すわけではないと語った。    

「感謝し感謝されてこそ」古田晴彦氏

 高校「現代社会」の授業で10年にわたりデス・エデュケーション(死の準備教育)を実践し、『デス・エデュケーション 展開ノート』(清水書院、2009年)の著者でもある古田氏は、「『有り難う』の気持ち」と題し、授業の内容を三つ紹介。

 「今日のプラス3」は、1日の中で「よかった」「嬉しかった」「有り難かった」「自慢できる」と思えることを三つ、日記や手帳に書き込んでいくというもの。日常の中のささやかなことに、気づきと感謝の気持ちを持てる人は幸せだと古田氏は指摘。

 「ピーナッツ・ゲーム」は、人に知られないように親切にすること、他者から受けた親切に敏感になることの二つを目的としたゲーム。クラス全員の名前を書いた紙を1枚ずつ引き、ピーナッツ・ウィーク(1、2週間)の間に、指定された人に対して気づかれないように親切をし、また、自分のピーナッツ(自分に親切にしてくれた人)が誰かを当てる、というもの。生徒は「ピーナッツ実行記録」と「ピーナッツ感知報告書」を提出し、実行成功者と感知者を表彰する。

 「『ガンで死ぬ』とはどういうことか」は、関西学院大学准教授の藤井美和氏が始めたもので、「目に見える大切なもの」「大切な活動」「目に見えない大切なもの」「大切な人」をそれぞれ三つずつ計12枚の紙に記入し、順に紙を破いていきながら、「ガンになる」ことを擬似的に体験するというもの。授業を体験した参加者からは、「自分の中で大事なものをあらためて考えさせられた」「12枚が最初は同じ大きさに見えたが、残りがわずかになるにつれて大きくなるような気がした」という感想が出された。

 古田氏は、「『有り難う』と言える相手がいること、『有り難う』と心から誰かに言ってもらえること、これが生きていてよかったとお互いに思える時ではないか」と結んだ。

 全体討議では、参加者がグループに分かれて意見を交わした。「感情を出すことが大切だと言うが、男性や子どもには難しい」「身近な死であっても受け入れ方やインパクトは人それぞれ違う」「震災では、日本中が一つの祈りに包まれ、大切なものが何かを考える時間になった」などの意見、感想が相次いだ。

 気仙沼の子どもたちのようすについて木村氏は、「『大変だ』とは一言も言わない。弱音を吐くことができない。それが時間が経つにつれて身体に表れてくる。突然調子が悪くなって保健室に駆け込む生徒が多くなった」と指摘。さらに、「子どもではなく親に症状が現れることが一番多い。親も子どもの前では弱音を吐けない。特に母親が震災うつになり、子どもが看病するケースが多い」と述べ、そうした状況を子どもが相談できる場所がないことを問題視した。

 同会は、創設者アルフォンス・デーケン名誉会長の提唱する「生」と「死」のテーマを中心に、デス・エデュケーションやグリーフケアなどの啓蒙・奉仕・研究の各領域にわたる活動を行っている。

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