AIDS文化フォーラムin横浜「宗教とエイズ」 性の問題・死生観を議論 カトリック・プロテスタント・浄土真宗が参加 2012年8月18日

 市民の立場からエイズについて考える「AIDS文化フォーラムin横浜」が8月3~5日、かながわ県民センター(横浜市)で開催された。19回目を迎えた今回は、「AIDS??文化???――仲間 新発見!」をテーマに、エイズ予防や感染者への理解を深めるための約50の講座や展示が行われ、延べ3100人が来場した。

「性は神からの祝福」藤崎義宣氏

 初日には、「宗教とエイズ」をテーマにしたセッションが行われた。7回目となる今年は、岩室紳也氏(地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター長、医師)の司会のもと、古川潤哉(浄土真宗本願寺派浄誓寺僧侶)、鈴木真(カトリック百合ヶ丘教会司祭)、藤崎義宣(日基教団久ヶ原教会牧師、臨床心理士)の各氏が、性の問題や死生観について意見を交わした。

 同フォーラムの組織委員である鈴木氏と、キリスト教メンタル・ケア・センター(CMCC)の副理事長を務める藤崎氏は今回が初参加。

 同性愛の受けとめ方について岩室氏からの問いかけに、鈴木氏は、「聖書で同性愛は〝ノー〟と書いてある」とした上で、「それで悩まれたキリスト者の方は少なくないと思う」と主張。個人的な見解として「若いころはかなり偏見があった」と述べつつ、十数年前に同性愛者の人と出会ったことで自分の間違いに気付き、「キリスト者としてただその人を見られなかった」と反省したことを振り返った。また、「(同性愛に関する)バチカンの声明は非常に歯切れの悪いものでしかない」とも指摘。

 藤崎氏は、「性行為としての同性愛に関しては聖書は禁じている方向を取っている」とした一方で、ダビデとヨナタンの関係を例に、「旧約聖書では、〝愛〟は精神的、霊的な領域にとどまらず、身体的な接触も含んで〝愛〟と言う。もともとキリスト教は〝性〟に対しておおらかだったし非常に肯定的だったろうと思う」「ユダヤ教、キリスト教では〝性〟は肯定された、神さまからの祝福」と述べ、つつましく慎重に扱うべきことを強調した。

「希望があるのは強み」鈴木真氏

 死のとらえ方について問われると、藤崎氏は心理学者のジェイムズ・ヒルマン氏ががんで死を宣告された際、「好奇心」が大事だとしたこと、死のプロセスを「魂を作り上げていく期間」としたこと、そして友や愛する人を求めたことを紹介。「もともとエイズは人と関係する中で生まれてくる病」と述べ、「大事なのは、苦しんだり、どうしようもなくなっている人に寄り添う人間が出てくる、ということ」「病や死は個人だけのことにとどまらない。必ずそこに人と人との深いつながりや関わりが出てきて、そこから友情が生まれ出す。新しい形の愛が再生し始める」と語った。

 鈴木氏は、「聖書において〝死〟はすべての終わりではない」「聖書において〝生きる〟とか〝いのち〟という言葉は神とのつながり、絆を表す言葉。この世を去った後も、神のみもとでその人の存在は生き続ける」と説明し、「先があるという希望がいつもあるのは強みだと思っている」と主張。病気については「神からいただいた恵み」であるとし、「困った時の神頼み」は悪いことではないと述べ、「自分の力で何も解決できなくなった時に、神の力があることを感じることができる」とした。

 また、聖書の最も重要なメッセージとして、「『あなたは生きていていいんだよ』『あなたは望まれてここにいるんだ』『あなたは愛されて、とても大切な存在なんだよ』というメッセージをすべての人間、すべての生き物はいただいている」と訴えた。

 古川氏は、「浄土真宗はロジックの部分がキリスト教に近い。たくさん拝めばどうにかなるということではないところが、他の仏教とは違う」とした上で、「生老病死」は苦であるとし、「人生が苦であると思った人が、この先どこに行き着くかを想像して老病死のことを考えた時に、その先を見出して生きる力を得る」「生まれたからには老病死は避けて通れない。そこを自覚しないと苦悩のまま」と語った。

 同フォーラムは、横浜YMCA、カトリック横浜教区、横浜いのちの電話、横浜YWCA、横浜商工会議所エイズ問題対策懇談会、ワイズメンズクラブ国際協会東日本区湘南・沖縄部の6団体による組織委員会が主催し、神奈川県の共催で、毎年8月に開催している。1994年に横浜で「エイズ国際会議」が開催されたのを機に始められた。昨年初めて京都でもフォーラムが行われ、今年10月6~7日に2回目が同志社大学新町キャンパスで開催される。

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