原発から「人間を守る」 平和といのち・イグナチオ9条の会4周年シンポ 2012年9月15日

 平和といのち・イグナチオ9条の会は、創立4周年を記念して、「いま、平和といのち――憲法と3・11後の希望」と題するシンポジウムを9月1日、カトリック麹町教会ヨセフホール(東京都千代田区)で開催した。約60人が参加した。同会世話人代表の光延一郎氏(イエズス会司祭、上智大学神学部教授)の司会のもと、幸田和生(カトリック東京大司教区補佐司教)、高田健(許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局)の2氏が発言した。

「福島の声届けたい」幸田和生司教

             

 幸田氏は、日本カトリック司教団が昨年11月に発表したメッセージ「いますぐ原発の廃止を~福島第1原発事故という悲劇的な災害を前にして~」について解説。同氏は昨年7月以来、福島をたびたび訪れ、現地の声を聞く中で、「できるだけ福島の人たちの声を届けたい」「福島の現実が分かれば、原発の問題は分かるはずだ」という思いを抱いてきたという。

 福島では、人によって原発に対する考え方が異なり、放射能について話題にすることができず、中には孤立し、自殺する人もいるとし、「人と人とが放射能によって引き裂かれている」と主張。司教団メッセージの中の「『人間の限界をわきまえる英知』を持たなかった」という言葉に触れ、大飯原発の再稼働が、将来のエネルギー政策を決めないままに決定されたことを非難。「原発そのものが人間の限界を超えた技術だったということを認めざるを得ない」と強調した。

 さらにメッセージのポイントとして、核廃棄物の問題に言及し、「処理の方法が何もない核廃棄物を将来の世代に押し付けていくことは倫理的に許されない」と主張。メッセージのタイトルにある「いますぐ」については、「いますぐやめる」という意味と「いますぐ決断する」という意味があるとし、「いますぐやめることを決断してそこに向かって歩み始めるべきだ」と強調。メッセージのもう一つのポイントとして「単純質素な生活」を挙げ、消費社会からの脱却を訴えた。

 「カトリック信者は皆原発に反対しなければいけないのか」という問いに対しては、個人的見解として、「教会の牧者は、『人間を守る』という観点から、どうしても発言しなければいけないことがある。このメッセージに関しても、個々の司教が神の前で自分の信仰と良心に基づいて、『このことだけは言わなければいけない』と思ったことを集めたもの。日本の16教区の司教全員がそう思ったということは、それなりに受け取ってほしいと思う」と述べた。

「デモや集会に希望」高田健氏

             

 高田氏は、被災者すべてに対し、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条が適用されるのは当り前だと述べ、憲法99条に基づき、国会議員は憲法25条を擁護して実行する責任があると強調。「憲法10条~40条の権利の問題は、99条から見て国会は全力を挙げて保障しなければいけない」と訴えた。

 また、憲法に「非常事態条項」がないために東日本大震災に対する政府の対応が必ずしも上手くいかなかったとする改憲論者の主張に言及。大日本帝国憲法の「非常事態条項」は、国家の非常時には臣民の権利を制限して非常事態に対応するというもので、戦争と一体化したものであることを解説した。さらに、改憲論の最終的な目的は憲法9条を変えることだとし、米国からの要求である「集団的自衛権の行使」に向けられていると指摘。

 「福島の問題がいまだに解決しない中で、原発を再稼動させてしまった。再稼動した原発の足元には活断層があるのが明らかになってきている。次の総選挙を経て日本の政権を担おうという人たちが集団的自衛権や原発の再稼動でとんでもない政策を取ろうとしている」と述べつつも、「わたしはそれでも希望があると思っている」と主張。デモや集会など、脱原発運動が広がっていることが希望であるとし、「まさにこれは憲法の民主主義の表現だと思う。一人ひとりの市民が立ち上がって、主権者として自分は何をしたらいいのかということをつかみ始めた。こういうことをわたしたちは本当に発展させられるかどうか懸かっている」と語った。

     ◇

 同会は、愛と真理に基づく平和の実現、軍備縮小と核兵器の廃棄、苦しむ兄弟姉妹と国境を越えてつながることを目的に、2008年9月に発足した。麹町教会の前主任司祭であったドメニコ・ヴィタリ氏が、前任地の徳山で地域の9条の会に参加していたことから、同教会の中でグループの発足を呼びかけたことが発端。現在では、同教会を出会いの場として、キリスト者であるなしを問わず賛同者が集まり、独立した活動を行っている。

 賛同会員は約250人(2012年8月現在)。主な活動は、講演会や学習会の開催、ニュースレターの発行など。毎月9日には四ツ谷駅前で歌とメッセージによる「キャンドルアクション」を行っている。

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