映画『イラン式料理本』 2012年9月22日

 料理を題材にした映画が増えている。この秋おすすめしたい一本である。現在のイラン社会や家族のあり方をわかりやすく描く。

 監督はイランを代表する鬼才モハマド・シルワーニ。

 ドキュメンタリー形式で、映画そのものの構成は地味だ。監督の母、伯母、妹、友達の母親、母の友人、義理の母、そして妻…。登場する女性たちが、台所に設置されたカメラ越しに監督の質問に答えていくというシンプルさである。

 新婚夫妻のキッチンからベテラン主婦の台所まで、調理されていく晩ごはんは、その人が生きてきたバックボーンが反映されているようにも思う。特に主婦暦35年という義母のつくる手の込んだ料理は必見である。

しかし本作が単なる料理に重きをおいたエンタメでないのは、台所をクローズアップしつつイラン社会の今と昔を描き出しているから。すなわちイラン女性の立場の弱さや、そうした妻に対する夫の思いやりのないコメント。男と女、嫁姑といったテーマがぎゅっと濃縮されている。

 賢そうな監督の妻が思わず「どうしてこんなに自分の時間を家庭に捧げなくてはならないのだろう」と本音を吐く。

 シルワーニ監督は本作を「イラン女性たちへの賛歌」とし、「フェミニスト映画を意図したわけではないが、料理と料理に関することに一度は向き合わなければ、と思っていた」そう。(た)

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