〝「違い」は「間違い」じゃない〟 教会版「文化祭」いのり☆フェスティバル2012 2012年10月20日

 「『違い』はきっと『間違い』じゃない」――教派や企業、団体の「枠」を超えて「草の根」のフラットな協働を志すフリーマーケット「いのり☆フェスティバル」(略称=いのフェス)が9月29日、東京卸商センター(東京都台東区)で開催された。有志実行委員会による主催で、昨年に引き続き2回目。いのちのことば社、ドン・ボスコ社、キリスト教リサイクルショップ「復活書店」を含め全国から24の企業、教会、サークルなどが出展。非信徒を含むおよそ250人が来場し、1日限定の教会版「文化祭」を満喫した。

「草の根」のフラットな協働を

 「祭典」の舞台となったのは、隅田川に面し、スカイツリーも臨める展示場。同人系のイベントで使用されることも多い場所だが、教会や学校ではなく一般の施設を使うというのも、教派的な色分けを避けるための運営上のこだわりだという。

 前回、ゲストとして招かれた水谷潔さん(小さないのちを守る会前代表)は、この催しを「キリスト教会の『ビックロ』」と評し、「参加してみて、教派横断的な試みの意義を大いに実感した。普段は教派のカベがあり、出会えない方々との貴重な出会いがいくつもあり、多様な働きや賜物に、目が開かれる機会でもあった」と振り返る。

 今年も出展ブースには多彩な顔ぶれが並んだ。キリスト教専門出版社のほか、『マンガ旧約聖書』(日本聖書協会)を手がけた漫画家のあずみ椋さんも参加。ボーカロイド(音声合成ソフト)の初音ミクが歌う「いのフェス非公式テーマソング」を収録したCD、『ふしぎなキリスト教』の誤りを指摘した自費出版、同人誌の無料頒布、似顔絵コーナー、イラスト、オリジナルグッズの展示、販売など、地方からの参加も目立った。小冊子『ひと目でわかるキリスト教葬儀の流れ』を配布したキリスト教会葬儀研究所(CCFI)は、関連業社の協力を得て実際の教会葬儀で使用する祭壇を再現し、ひと際注目を集めていた。

キリスト教会葬儀研究所は祭壇を再現

 

仏教界・オタク界とコラボ

 会場の一角に設けられたセミナー会場では、終日さまざまな企画が催された。シンガーソングライターのMigiwaさんはミニライブを2回行い、東日本大震災の被災地で歌った体験などを披露。

 「カミとホトケと、時々、オタク」と題する鼎談では、「オタキング」こと岡田斗司夫さん(株式会社オタキング代表)、僧侶の吉村昇洋さん(曹洞宗普門寺副住職)、元宣教師の波勢邦生さん(キリスト教ネットメディア研究会発起人)がキリスト教、仏教、サブカルチャーをめぐって縦横に語り合った。

 「キリスト教徒の実数がコミケ(同人誌即売会)動員数の60万人に満たないというのは意外」「日本人は『無宗教』と言われるが、特定の宗教を持たず別の原理を信じているだけ」と指摘するなど、独自の視点で宗教界に切り込んだ岡田さん。母親がかつて熱心なキリスト教徒で、お祈り中によそ見をすると罰が当たると怒られたことや、YMCAの予備校に通っていた中学生時代、カトリック教会に誘われたという体験も明かした。キリスト教各派の特徴をロボットアニメになぞらえ、プロテスタントを「ガンダム」、カルヴァン派を「Zガンダム」にたとえる一幕も。

鼎談する(左から)波勢、吉村、岡田の各氏

 また、以前から聞きたかったとして、「神をリアルな存在として本当に信じているのか」と質問。「キリスト教は、中心に神がいなくても『よくできた道徳律』として成立する。非合理的な神の存在を信じなくても、教義や行動様式を支持している人もいるのでは?」「今日のように科学文明が発達した豊かな時代では、人をハッピーにするという機能であればディズニーランドでも十分では?」

 「構造は同じだが、人生における深い悩みや魂の救済というレベルでは、信仰を持って生きる歩みや神との対話なしには作動しないシステム」と波勢さん。「こんなことを聞いて失礼では?」と恐縮する岡田さんに対しては、「本来は教会もお寺も、気軽に来て率直な質問をぶつけられる場所のはず」と応答した。

 鼎談を観覧したある牧師は、「話しても相手に理解されないかもしれないが、しかしその相手もまた、その人にとっての『体験』に出会うかもしれないという望みをかける。だからこそ、通じなくとも語り続ける。そのジレンマというか縮図を、今回の鼎談はとても濃縮して教えてくれたように思う。伝道とは何かをあらためて考えさせられた」と感想を寄せた。

 「食べる聖書」と題する体験型ワークショップには、日本オリーブオイルソムリエ協会認定の資格を持つ久米小百合さん(教会音楽家)が登壇。月桂樹(ローレル)、コリアンダー、イノンド(ディル)、岩塩、パンなど、聖書に登場する食材を使用しながら、当時の風習や食生活について解説した。

 「聖書にこそ美味しいもののルーツがある。誰でも楽しめるのは食べたり飲んだりすること。まずは教会の集会で、これらを使いながら聖書に親しんでもらっては?」と提起。旧約聖書の時代から「自然なもの」として存在したオリーブオイルの効能についても紹介した。

 セミナー会場の模様はすべてユーストリームで中継、配信され、延べ1千人以上が視聴した。公式サイト「いのフェス・com」(http://www.inofest.com)では録画映像も公開されている。

     ◆

 ツイッター上では、「ホントに『いのり』を媒介にした、アルティメットぶりが炸裂した多彩さ。このサークル数で、こんなに多彩なのは、このイベントの面白いところかも」「時代の先を行ってると、参加して感じました。一つ一つ振り返ると、個性的で可能性に満ちたフェスだったなと」といった評価の声や、首都圏外での開催を望む声も見られた。

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