〝いま、尊厳死法制化を問う〟 國學院大學「宗教と生命倫理シンポ」 2012年11月3日

 日本宗教連盟(芳村正徳理事長)は10月16日、國學院大學で「いま、尊厳死法制化を問う」をテーマに、「第6回宗教と生命倫理シンポジウム」を行った。今年3月、尊厳死の法制化を進めようとする国会議員連盟が「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」を公表したことをふまえ、法制化の是非をめぐって討議した。

 コーディネーターを島薗進氏(東京大学大学院人文社会系研究科教授)が務め、長尾和宏(日本尊厳死協会副理事長)、加藤眞三(慶應義塾大学看護医療学部教授)、小松美彦(東京海洋大学大学院教授)、戸松義晴(浄土宗総合研究所主任研究員)の各氏がパネリストとして登壇した。はじめにパネリストそれぞれが講演し、その後、討議にうつった。

 在宅医として延べ600人余の在宅看取りに立ち会ってきた長尾氏。現場の医師が延命治療を中止した場合に「殺人罪で訴えられる恐怖」があることから、法制化の必要性を説く。終末期医療が自身のライフワークになってきていること、そして不治かつ末期となった時に延命処理を控えてほしいとする「リビング・ウィル(LW)」を文書で表明することの必要性を強調した。

 加藤氏は、「尊厳死を法制化することではなく、患者と医療者が協働作業で尊厳ある生を求める医療を目指すことが、より重要だ」と意見した。

 「本来の尊厳ある死を迎えることを尊重するための医療」実現が目的の法案であれば反対の理由はないとしながら、法案の趣旨は「終末期に係る判定、患者の意思に基づく延命措置の中止等及びこれに係る免責等に関し必要な事項を定めるもの」と記載されていることから、延命措置中止を合法化し、それを推進することが目的であることが明白である、と指摘。

 現在の科学技術と死生をめぐる問題を歴史的に研究する小松氏は、国内での安楽死や尊厳死を推進してきた思想を解説。また法制化は、ナチスドイツが議会での審議後に制定した「優生政策」に類似することを挙げた。

 戸松氏は、尊厳死法制化をめぐる各宗教団体の意見を紹介し、消極的であることを話した。

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