「原子力エネルギーと現代社会 未来への責任」 〝命守り危険遠ざける者に〟 WCRP日本委員会が研究集会 2013年2月16日

 公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(庭野日鑛会長)は、1月30日、第39回目となる「平和のための宗教者研究集会」を東京都杉並区の立正佼成会法輪閣で開催した。『原子力エネルギーと現代社会 未来への責任』を主題に、約200人が参加した。

 今回の研究集会の実行委員長である植松誠WCRP理事(日本聖公会首座主教)=写真=がシンポジウムの趣旨を説明し、山口幸夫(NPO法人原子力資料情報室共同代表)、江川和弥(ふくしま連携復興センター理事)、内藤新吾(福音ルーテル稔台教会牧師)の各氏がそれぞれ発表した後、眞田芳憲WCRP平和研究所所長(中央大学名誉教授)がコーディネーターを務める形でパネルディスカッションを開始した。

 山口氏は、科学の立場から主題の意味を探った。科学の原罪について、「原爆の父」とされるR・オッペンハイマーや、核物理学者の朝永振一郎を紹介しながら解説。

 原子力の「平和利用」への願望として、坂田昌一が〈1ポンドのウラニウムから得られる原子エネルギーは電力に直すと実に1140万キロワット時になる〉〈原爆として戦争に浪費するよりも約100倍もよけいのエネルギーが人類の福祉の増進のために利用できることになる〉と述べたことに言及。「もっとも良心的な学者である坂田先生が、このように言ったことお覚えておくべきだ」と強調した。

 さらに「科学はかつては天真爛漫だった。原爆を機に科学には原罪があるのではないかとささやかれるようになった。ひょっとしたら、『知』を捨てなくてはならないのでは、と考えている」と結んだ。

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 江川氏は、第一原発から100キロ離れた会津に住んでいる。江川氏が理事を務める団体について説明し、復興の全体像や、今後の支援の方向性を述べた。「被災地である岩手、宮城から比べると(復興が)大きく遅れている。それは被災者が家に戻れないから、自立するにもできない」と、その深刻な現状を話した。

 宗教者ができることとして、「今こそ宗教者は福島へ行くべき。お年寄りの人は『放射能をなめてでもいいから家に帰りたい』と言っている。そのようなお年寄りが仮設住宅に入って、そしてそこで向き合ってくれる宗教者がいたらいいと思う」と提言した。

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 「原子力行政を問い直す宗教者の会」事務局の内藤氏は、18年前、原発で被曝労働に従事した野宿の日雇い労働者との出会いを機に原発問題に取り組んでいる。

 原発は、最も貧しい人の犠牲の上に成り立っていることから、そこに潜む差別の構造を指摘した。「(原発の問題について)わかっているのになぜ止められなかったのか。経済優先でやってきたのがまずかった。これは、アメリカの核政策に付き合ったことによる拝金主義が根っこにある。宗教者は、(大企業など)お金があるところには、気を遣わないことだ。そういうことは、自由結社である宗教家しか発言できない。他とは違う歩み方をしてほしい」。「宗教者は不公平に対し声を上げないでどうする!宗教者は、命を守り危険を遠ざける者であれ!」と強く訴えた。

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