国際宗教研究所 〝「いのりと分かち合い」ある共同体〟 公開シンポで釜石ベースキャンプの支援紹介 2013年3月2日

 国際宗教研究所(星野英紀理事長)は2月9日、宗教者災害支援連絡会(宗援連、島薗進代表)との共催による公開シンポジウム「3・11以後の日本社会と宗教の役割」を大正大学(東京都豊島区)で開催した。震災以後の歳月を振り返りながら、今後の日本社会で宗教がどのような役割を果たすのかについて考えるという趣旨で催されたもので、約150人が参加。

 パネリストには、仏教から金田諦應氏(傾聴移動喫茶「カフェ・デ・モンク」マスター)、神道から川村一代氏(ライター兼神職)、キリスト教から林里江子氏(クリスチャン・ライフ・コミュニティ被災地支援デスク、宗援連世話人)、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会から篠原祥哲氏(仙台事務所所長)が招かれ、それぞれの立場から発言した。

 秋田光彦(浄土宗大蓮寺住職)、渡辺順一(金光教羽曳野教会長)の両氏がコメンテーター、稲場圭信(大阪大学准教授)、黒崎浩行(国学院大学准教授)の両氏が司会を務めた。

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 ヘンリ・ナウエンの著書名から「傷ついた癒し人――被災地における当事者性」と題して発言した林氏は、ボランティアなどへのインタビュー映像を織り交ぜながら、岩手県釜石市のベースキャンプにおける被災支援の活動を紹介。

 1日の活動を振り返り、分かち合うひとときを設け、聖堂などでテゼの祈りを行っているベースキャンプの特徴を「『いのりと分かち合い』のある共同体」と表現し、「いわば原始キリスト教の共同体のようなピュアな共同体が、多くの人を魅了してきた」「昼間の奉仕と夜の分かち合い、祈りの生活は、まるで修道生活のようだが、強制されることなく、このような生活を選ぶ人も多かった」と述べた。

 ボランティアの中には休職中の人も多く、「自分の人生を考え直すために被災地に赴いた人は多かったと思う」として、参加者が一様に口にする「感謝」の言葉に注目。しかし、支援活動の長期化、心のケアの難しさに直面する個別ニーズの複雑化の中で、継続的なボランティアやスタッフには疲労の色が濃く、彼らからの悩みの声を聞くこともあったという。

 「彼らは釜石に留まり、『ボランティアはしょせんよそ者だ』という地元の声もある中で、被災者に寄り添っている。彼らの傷は癒されていないかもしれない。しかし、それこそが彼らの証であり、自らのアイデンティティとして、彼らの支援の力になっているのではないか。彼らは、包帯を巻き直しながら癒す『傷ついた癒し人』なのではないか」と、支援者のメンタリティについて分析した。

 カトリック教会では仙台教区とカリタスジャパンが共同でサポートセンターを作り、主に教会を拠点としたベースキャンプを設置。地元の社会福祉協議会などに協力しながら支援を行っている。釜石ベースは3月から、「NPO法人カリタス釜石」になる予定。

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 シンポジウムの討論では、政教分離の原則を守りつつ特定の宗教に偏らない支援のあり方、宗教者が公共性を保持しつつ行う活動と「布教」との関わり、サポートの可能性などについて議論が交わされた。

 宗援連は3月2日、東北大学で同大大学院文学研究科、心の相談室などとの共催によるパネルディスカッション「東日本大震災と宗教者・宗教学者」も予定している。

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