キリスト教書に電子化の波 〝遺産〟埋もれるのは「もったいない」 2013年3月2日

 携帯端末の多様化、規格の不統一、著作権上の課題など、多くの障壁に阻まれていた国内の電子書籍市場だが、昨年、インターネット販売大手のアマゾンと楽天が参入したことで、その様相は大きく変わり始めている。キリスト教出版界に電子化の波が押し寄せるのも、もはや時間の問題。果たして電子書籍の普及は、グーテンベルク以来の「改革」となり得るのか。専門出版社に先駆けてキリスト教書の電子化を模索する二つの動きを追った。

新しい伝道ツールとして

 イムマヌエル綜合伝道団出版事業部(矢木良雄部長)はこのほど、電子書籍制作・販売管理・コンテンツアドバイス・コンサルタントを担う部門として「インマヌエルeブックス」を立ち上げた。企業主催のセミナーなどにも参加しながら、独自に知識と技術を磨いてきた同事業部の大津博子さんが実務を担う。

 記念すべき第1冊目として、13編からなる聖書講解『乱気流を飛ぶ――旧約聖書ダニエルから』(藤本満著)をキンドル版でのみ発売し、手応えを得た。続けて手掛けた『新訳キリスト者の完全』(藤本満訳)は、2006年に伝道団創立50周年を記念して発行されたジョン・ウェスレーの名著。電子書籍の特性を活かし、注釈にはすべてリンクを貼り、読みやすい工夫を施した。

 以来、デボーションに用いる霊想書『エマオの道で』4分冊(デニス・F・キンロー著)、伝道団の創設者である蔦田二雄氏が著した『聖潔の生涯』と相次いで出版。いずれも、アイフォン、アイパッド、アンドロイドアプリで閲覧できる。なかには、1週間でダウンロード数が100を超えるものもあり、予想以上の反響に関係者も驚きを隠せない。

 「紙の本が売れなくなる」という根強い懸念がある一方、フェイスブックを駆使して広報にも力を注ぐ大津さんは、紙媒体とは購買層がまったく違うことを実感。「海外の日本人教会で働く日本人宣教師にも読まれるなど、新しい伝道ツールとしての可能性を多分に含んでいると確信した」と話す。

 昨年、伝道団の代表に就任した藤本満さんは、2月にフェイスブックに登録したばかりだが、海外とも瞬時につながるネットワークの広さとアピール力の強さを改めて評価。より多くの若い層に読んでほしいというのが、「電子化」に乗り出した最大の動機だという。

 「出版技術は海外の信仰復興運動の要でもあった。電子媒体への警戒や紙へのこだわりなど、専門出版社が二の足を踏まざるを得ない状況も理解できるが、ただ指をくわえてまっているわけにはいかない」

 「インマヌエルeブックス」の出版事業は、3月の年会で承認を得て、本格的に始動する。目下、教派内でも問題意識を共有するため孤軍奮闘中。「理解されるには実績を重ねる以外にない」と藤本さん。年内に15冊は出したいと意気込む。詳しくはフェイスブックページ(https://www.facebook.com/immanuel.ebooks)まで。

(左から)藤本氏、大津氏、八木氏

 

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