〝9条守り、脱原発めざして〟 「宗教者九条の和」憲法講演会 2013年3月23日

 「憲法・原発――改めて民主主義を考える!~9条を守り 脱原発をめざして~」と題する憲法講演会が2月23日、梅窓院・祖師堂(東京都港区)で開催され、約120人が参加した。平和を希求する宗教者が宗派・教派を越えて集う「宗教者九条の和」(事務局・日本山妙法寺内)が主催した。脱原発社会をめざす基礎自治体の長で組織される「脱原発をめざす首長会議」事務局長の上原公子氏が講演、福島原発避難者の古川好子氏が報告を行い、松浦悟郎(カトリック大阪教区補佐司教)、小野文珖(日蓮宗僧侶)の両氏を交えてシンポジウムが行われた。

 元国立市長で、「教育・子育て9条の会」呼びかけ人でもある上原氏は、「原発事故は、住めなくなってしまう地域、不安を抱えなければならない人々、その不幸が将来にわたって続くという意味では、戦争よりひどい状況」と語った。「福島とともに生きる」というように第三者的に語るのではなく、「福島を(に)わたし自身が生きる」と、第一人称に切り替え、福島の現状を見据えていくことを提唱。

 憲法25・26・27条を引用し、「今、福島の人たちは健康で文化的な暮らしがまったくできていない」「子どもたちは安心して教育を受ける権利が保障されていない」「福島の人たちは働く場所もないし、働けば保証金がなくなるから働けない」と訴えた。また憲法12条から、民主主義社会を築くために「自分たちで見極めて、努力をして、獲得していく」ことを強調。「原発都民投票条例制定」の直接請求運動を例に、「行動すること、実行することが何よりも大事」と語った。

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 福島第一原発と第二原発に挟まれた福島県双葉郡富岡町は、現在も警戒区域に指定されている。同町から避難し、会津の「放射能から子どものいのちを守る会」の活動に参加している古川氏は、「いち早く戻ることこそが復興」とする風潮に疑問を持つと語った。「そこには〝戻る〟〝戻らない〟という選択肢が見当たらない」「将来的に確実な復興をと考えた時、今現在〝戻らない〟と決めるしかなかった世代をこれからどう援助し見守っていくのか。それこそが重要ではないか」と述べ、「『福島はもう大丈夫だ』と言い、皆が安心して暮らしていると見せて、避難者をとにかく早く帰還させる。その流れの先に、原発の再稼働や新設がないと言い切れるのか」と訴えた。

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 シンポジウムでは会場から、「宗教団体はかつて差別の助長や侵略戦争への加担を行ってきた。宗教は個人の自由や基本的人権の問題についていかにあるべきか」との問いかけがあった。松浦氏は、「宗教はそういうもの(戦争など)に目を閉じ、追随していく役割も果たしてしまうし、逆に宗教的な確信が、たとえひとりになっても『わたしはこのために生きる』という力強さの源にもなると思う」と主張。

 憲法に関して宗教者が協働していることを評価し、「基本的人権という言葉で表している人間の尊厳、そしてそれが普遍的であるという言葉が憲法の中に出てくるのは驚き」「宗教者が信じているものが憲法の中に具体的に表れている」と述べ、憲法を守ることが宗教者の課題であり前提だと語った。

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 シンポジウムの後、参加者一同で「緊急アピール」を採択した。アピールでは、9条改憲の動向に危機感を示すとともに、福島の放射能汚染の実態にも言及。「憲法第九条が今日まで、私たちのいのち、自衛隊員のいのち、アジアの人たちのいのちを守ってまいりました。憲法第九条の危機の今だからこそ、私たち宗教者は九条を守ることを支持する多数の市民と連なって、いのちの尊さを祈り、声を大に呼びかけなければなりません」として、共同の輪を広げ、すべての原発を廃炉にし、原発被災者を救援することを訴えた。

 憲法講演会は今回が5回目。日本カトリック正義と平和協議会、日本キリスト教協議会(NCC)などが協賛している。

 

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