翻弄される被災地 続く模索(3) 報じられない実情にも目を 2021年3月23日

 震災後、全国的に聞かれた「東北人は忍耐強い」との声。メディアでも「悲劇のヒーロー」が取り上げられ、「復興美談」が語られてきた。郡山市に住む産婦人科医の富永國比古さん(ロマリンダクリニック院長)は、昨年の日本キリスト者医科連盟全国委員会シンポジウムで、「報道されない実情」として、家庭内の確執の顕在化、遺産相続をめぐる争い、離婚、中絶などを報告した。避難所でも、盗難、セクハラ、けんか、深酒などのトラブルは少なくなかったという。しかしこれらも、災害によって露呈した人間の真実として記憶されるべきだ、と富永さんは言う。

 「いま突き付けられている現実からしか回復できない。キリスト教界の関わり方も、これからが正念場だと思います。現状認識が、表面的な『絆』とか『復興』というレベルでしかないとしたら甘すぎる」

 原子力政策に潜む差別構造にメスを入れてきた地元、福島大学の清水修二さん(前副学長)は、原発批判論者の多くが「放射能を拡散させるな」と主張することに異を唱える。「被災者心理を知らずに無神経に外から『善意』を押し付ける者への反発があることは知っておいてほしい」(『原発とは結局なんだったのか――いま福島で生きる意味』東京新聞)。

 東京では3月9日、「さようなら原発1千万署名市民の会」主催による「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」が行われ、全国から1万5千人が参加。作家の大江健三郎さんは、「原発事故をなかったことにしようとする勢力と闘う」と決意を新たにした。国会前をはじめ、各地での抗議行動も続いている。

 2年目を迎えた今も、残された課題は大きい。「収束」とはほど遠い現実の中で、宗教者は、キリスト者は、どこに立つのか。

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